最新記事
BOOKS

強力な視覚体験に支配される「ミラサォン」とは何か?...アヤワスカの科学的研究

2024年12月14日(土)09時50分
シダルタ・リベイロ(神経科学者)

このプロトコルのヒントとなったのは、米国人神経科学者スティーヴン・コスリンがハーバード在学中に行なった古典的な研究であり、これにおいてコスリンは、視覚的なオブジェクトを想像することが、精神的な努力に比例して一次視覚野を活性化させることを示した。

アラウージョの研究の結果について説明する前に、1つ言及しておきたいことがある。わたしはこの実験の設計と、アラウージョが当時教授を務めていたサンパウロ大学リベイラン・プレト校の病院での最初のデータ収集作業に参加している。


 

わたしがこのとき痛感したのは、病院内に設置された磁気共鳴スキャナーの中にアヤワスカの体験を持ち込むことの難しさだ。

これが困難な理由としては、上述した生理的変化のほか、ボランティア参加者たちの信仰が挙げられる。彼らにとって、スキャニングを受けている状態で精神世界に入り込むというのは容易なことではなかった。

ボランティアたちは、サント・ダイミ教を信仰していた。サント・ダイミは、ウニオン・ド・ベジェタルやバルキーニャといった教団と並んで、アヤワスカを聖餐として用いる主要な混交宗教の1つだ。

アマゾンの熱帯雨林のシンボルに根ざしたこの混交宗派を実践する人たちにとって、魂が苦悩して頻繁に肉体を離れると信じられている病院という環境にいることは、とりわけ大きな負担となる。

アヤワスカを摂取する前後のデータを比較したところ、視覚、エピソード記憶の回復、意図的・予想的な想像に関連する脳皮質のさまざまな領域において、脳活動の増加が見られた。

その視覚領域は、夢や精神病性の幻覚を見ている最中に活性化される領域と一致しており、さらには、解剖学的に網膜に最も近い皮質領域である一次視覚野の活動は、アヤワスカ摂取後に体験される精神病のような症状と強い相関を示していた。

加えて、脳の異なる部位の間の関係にも有意な変化が見られ、脳活動の大々的な機能的再編成が起こっていることが明らかになった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米豪首脳が会談、レアアース合意文書に署名 日本関連

ワールド

ガザ停戦維持へ措置、イスラエルに攻撃再開指示せず=

ワールド

トランプ氏「来年初めに訪中」 中国が招待

ワールド

マダガスカル新首相、実業家のラジャオナリベロ氏を首
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 7
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 8
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 9
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 10
    トランプがまた手のひら返し...ゼレンスキーに領土割…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中