最新記事

AI

対話型AI「Bard」発表のグーグル、社員から「急ぎすぎ」「近視眼的」と怒りの声が上がる理由

2023年2月15日(水)07時50分
冨田龍一
グーグル

400tmax-iStock

<マイクロソフトの躍進に焦るグーグル...社員からは「非グーグル的」などと批判の声が上がっている>

マイクロソフトは米国時間2月7日、検索エンジン「Bing」に対話型AIを搭載すると発表。これは同社が出資し「ChatGPT」などを展開するAI開発企業・OpenAIの技術を活用したものだ。

同社はOpenAIに最大で100億ドル(約1兆3308億円)という巨額資金を投資する見込み。OpenAIの独立性を維持しながらも、その研究成果を積極的にマイクロソフト製品へと取り込んでいく方針だ。

また今後は「Bing」だけでなく、「Word」「PowerPoint」「Outlook」といったツールにもAIを導入し、そのデモを2023年3月にも披露する予定ではないかと報じられている。

そんなマイクロソフトやOpenAIに対抗すべく、検索最大手であるグーグルも、同社が開発してきた「LaMDA(Language Model for Dialogue Applications:対話アプリケーション用言語モデル)」を基盤とした対話型AI「Bard」を開発。米国時間2月6日に公表していた。

だが、グーグル社内では「Bard」の発表は「急ぎすぎ」などといった不満の声も上がった。

CNBCが米国時間2月10日に報じたところによると、グーグルの内部フォーラム「Memegen」上では以下のような投稿がなされたという。

「サンダー・ピチャイCEOへ。『Bard』の発表もレイオフも急すぎて失敗に終わりました。近視眼的すぎます」

「サンダーもリーダーシップも『Perf NI(グーグルの人事評価制度における最低評価)』の評価がふさわしい」

「彼らは笑ってしまうほど近視眼的で、『選択と集中』に欠けており、非グーグル的だと言える」

確かに「Bard」の発表時にはあまりにも情報不足だったし、欧州時間2月8日開催のイベント「Live from Paris」はとっておきのタイミングだったのにも関わらず、あまり多くは語られなかった。

さらに、公式ブログにおいて「Bard」による誤回答を掲載していたとして、グーグル親会社アルファベットの株価は一時9%ほど下落した。

なお、実はマイクロソフトによる「Bing」の発表時にも多くの誤回答があった。エンジニアのディミトリ・ブレアトンが米国時間2月14日のブログ投稿で明かした。

現状は誤回答の生成など多くの懸念が残る対話型AIだが、今後は本格的な社会実装に向けて、いかなる進化を遂げていくのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中