最新記事

テクノロジー

水害対策だけじゃない? 調節池は平常時にどう活用されているのか

2022年7月27日(水)11時30分
※TOKYO UPDATESより転載
地下トンネル式の神田川・環状七号線地下調節池

地下トンネル式の神田川・環状七号線地下調節池。トンネル内径12.5メートル、貯留量54万立方メートル

<近年、全国各地で台風や豪雨による大規模な水害が発生している。その被害状況を踏まえ、東京都では、増水した雨水を一時貯留する「調節池」の整備を促進。調節池の中には、平常時に公園やビオトープとして利用できるものもあり、調節池の新たな活用法にも注目が集まっている>

東京都の痛ましい水害の記憶

かつて東京は、急激な市街化により流域の保水機能が低下し、たびたび水害に見舞われてきた。昭和41年、台風4号が接近した際には、都内を流れる一級河川の神田川が溢れかえり、約403ヘクタールという広域が水害にあい、約9000棟の家屋が浸水。

そこで、東京都では昭和40年代から激しい雨(1時間雨量50ミリ)に対応するため河川整備に着手した。川の氾濫を抑えるには、下流から川幅を広げる河川改修が一般的だが、多くの住宅が立ち並ぶ都心においては整備に時間がかかる。河川の途中の川幅を広げる方法もあるが、この場合は下流の川幅が狭くなっている場所で、水が溢れてしまう危険性がある。

tokyoupdates220727_2.jpg

平成5年には台風11号による集中豪雨で神田川が氾濫し、約85ヘクタールが浸水

そこで編み出されたのが、増水した水を一時的に貯留する「調節池」だった。

河川の水量を調整して水害を抑える調節池

石神井川の富士見池調節池を皮切りに各地で調節池の導入が本格化。現在は、都内の12河川28カ所(掘込式16施設、地下箱式9施設、地下トンネル式3施設)に調節池が設置されている。総貯留量は約263万立方メートルで、25メートルプール約8,800杯分に相当する。

初期につくられた調節池は「掘込式」と呼ばれる、川沿いにある空き地や公園などの広い土地を掘って、貯水できるタイプだ。溜まった水は自動的にはけるようになっていて、平常時はビオトープなどに使える。中には、田んぼとして使用されている調節池もある。

tokyoupdates220727_3.jpg

掘込式の金山調節池。ビオトープとして、地域の人々の憩いの場になっている

「掘込式」は、安く早くつくれるという利点もあり、各地に設置されたが、都心に近づけば近づくほど、貯留に使える土地は少なくなる。そこで、貯留量を増やすために、「地下箱式」と「地下トンネル式」が生まれた。

「地下箱式」とは、川沿いにある公園などの地下につくられ、箱の上部に蓋をするタイプ。上部はグラウンドや住宅地などにも利用されている。

「地下トンネル式」は、河川と交差している道路の地下深くにトンネルをつくり、そこに貯留するタイプだ。川沿いに設置する必要はなく、水の導入口と排水口さえあれば、どこにでもつくれる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=まちまち、FOMC受け不安定な展開

ワールド

英、パレスチナ国家承認へ トランプ氏の訪英後の今週

ビジネス

NY外為市場=ドル下落後切り返す、FOMC受け荒い

ビジネス

FRB0.25%利下げ、6会合ぶり 雇用にらみ年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中