最新記事

テクノロジー

ファーウェイ制裁の不透明な真実、グーグルはNGだがマイクロソフトはOK?

2021年7月27日(火)15時55分
高口康太(ジャーナリスト)

筆者のファーウェイ・スマホからでもGmailは読めるし、YouTubeは見られる。でも、パスワードを連携させたり、スマホで見ているサイトをパソコンの大画面に表示させたりといった、かゆいところに手が届くナイスな機能はことごとく使えない。

特に難儀したのはパスワードだ。電子版の新聞やショッピングサイトなど、ログインが必要なサイトはごまんとある。グーグル以外のサービスを使えば、パソコンとスマホの連動もできるかもしれないが、グーグルに依存しきった身としてはなかなかに難しい決断だ。

takaguchi20210727huawei-4.jpg

中国・上海のファーウェイ旗艦店 Robert Way-iStock.

米政府の制裁に一貫したロジックがない

というわけで、「グーグルが使えない」という重しがどこまでものしかかっているのだが、一方で「グーグル以外の制裁」についてはかなりゆるみまくっている点も印象的だった。

そもそも、現在ファーウェイに科されている制裁は何かをおさらいをしておこう。原則的には「米国企業からの部品、サービスは購入ができない」「米国で開発された技術を一定以上含む部品、サービスは購入できない」というものである。

2019年にこの規制が科されると、ファーウェイは「売ってもらえないならば自社で作るまで」と、どんどん自社開発を進めた。意気高揚だったわけだが、2020年の新たな規制で局面が変わる。

というのも、ファーウェイの自社開発とは、ファーウェイで設計して半導体世界大手、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)に量産してもらうというものだったのだが、新たな規制でTSMCの受託製造が禁止されたのだ。TSMCと同レベルの仕事ができるのは韓国サムスン電子だけだが、アメリカの目が光る中、こちらもファーウェイの仕事は受けられない。

外から買ってこられない、自社開発もダメとなると、もうどうしようもないように思える。ところがどっこい、ファーウェイはまだ生きていて、記事冒頭で紹介したように、日本市場で新製品を一挙リリースまでやっている。

いったい何が起きているのか? 実は規制には米政府の承認が得られれば輸出は許可されるという抜け道があり、一周回って普通に米国企業、日本企業から普通に部品が買えるようになっているのだ。

そこには米企業などファーウェイのサプライヤーが強く輸出許可を求めたことが背景にある。ファーウェイへの販売が禁止されれば、中長期的には代替部品を作る中国メーカーが成長し、米企業のシェア低下に繋がるとの危機感が広がったためだ。

現在では「モデムなど5G関連の部品」「グーグルのサービス」「ファーウェイが設計した半導体部品の受託製造」など、ピンポイントな部品以外は普通に購入できているようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

世界の大富豪の財産相続、過去最高に=UBS

ワールド

米政権、燃費規制緩和でステーションワゴン復活の可能

ビジネス

中国BYD、南アでの事業展開加速 来年販売店最大7

ワールド

インド中銀、0.25%利下げ 流動性の供給拡大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中