最新記事

インタビュー

「日本人にアルゴリズムは通用しない」元インスタグラム・長瀬次英が語る日本のSNS

2020年8月31日(月)16時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


少し前に、Facebookのリアクションに、「いいね!」に加えて「うけるね」「すごいね」「悲しいね」「ひどいね」「超いいね!」という5つが新たに追加されました。

日本では「これって必要?」というネットの意見をよく見ましたが、実際に海外では普通に使われていて、それによって誰もがシンプルに感情を表現しています。例えば、「子どもが生まれました」という写真を投稿すると日本では「いいね!」「超いいね!」の嵐だけど、アメリカだとリアクションしない人はもちろん、「ひどいね(英語版だと「angry」)」というリアクションを返す人もいる。

こんなふうに、普段からSNS上でオープンだと、AI(人工知能)にとっても分かりやすいし、アルゴリズムも力を発揮しやすいですが、日本人のリアクションでSNS広告を設定すると、企業が求めるパーソナライズ・マーケティングにはならず、マス・マーケティングと大して変わらない可能性すらありますね。

では、長瀬氏が考える日本人にマッチしたパーソナライズ・マーケティングとはどんな形なのか。その点について尋ねると、デジタルマーケティングのパイオニアからは意外な答えが返ってきた。


デジタル社会だからこそ、人が実際に行動を起こして「熱量」がピークに達しているリアルの「現場」が、マーケティングで重要視すべきポイントだと考えています。

何より日本人は海外に比べて、店舗で買い物をするのが好きだし、接客マナーに関しても世界一と言っていいから、企業と顧客がつながりやすい環境にある。そんな「現場」を軽視するなんて非常にもったいない。

それに、デジタル上で得られた顧客データや過去の購入履歴をいくら分析しても、あくまで傾向値しか分からない。

実際、そういったデータを用いてレコメンドするサービスはたくさんありますが、今まさに自分が欲しいものを薦めてくれたことなんてほとんどないはず。また、レコメンドの仕方や商品が気に入らなくて、ウェブサイトを利用しなくなった人も多いのではないでしょうか。

そういった顧客の嗜好との齟齬を防ぐためにも、「現場」に来てくれた顧客の声を聞いたほうが絶対いい。なぜなら、それは「今」であり、「生」の声だからです。

そして、現場で得られたデータをUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)に取り入れて活用すれば、さらに顧客に近づくことができる。デジタル技術を活用して、ウェブサイトでも顧客のことを思いながら、その「熱量」を下げることなく買い物をしてもらう、という発想が今後ますます重要になっていくでしょう。

【関連記事】自閉症の人はマーケティング・トリックに引っかかりにくいことが判明

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州、ウクライナ和平巡る協議継続 15日にベルリン

ビジネス

ECB、成長見通し引き上げの可能性 貿易摩擦に耐性

ワールド

英独仏首脳がトランプ氏と電話会談、ウクライナ和平案

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 「経済は米関税にも耐性示
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲う「最強クラス」サイクロン、被害の実態とは?
  • 4
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 5
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中