最新記事

コロナ時代の個人情報

「接触追跡アプリが第2波を防ぐには不可欠」ジョンズ・ホプキンズ大専門家インタビュー

CONTACT TRACING IS KEY

2020年6月16日(火)11時20分
フレッド・グタール(サイエンス担当)

Bill Oxford-iStock.

<感染拡大を防ぐのに、なぜ接触追跡が必要なのか。スマートフォンやアプリがどう役立つのか。「徹底するには医療従事者を大量に動員すべき」と、クリスタル・ワトソン助教は提唱する。本誌「コロナ時代の個人情報」特集より」>

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための行動制限を解除すれば、感染の第2波を引き起こすリスクが付いて回る。その結果、ロックダウン(都市封鎖)を解除しても、またすぐに再度のロックダウンを行う羽目になりかねない。
20200623issue_cover200.jpg
専門家によれば、それを避けるためのカギを握るのは接触追跡だという。新型コロナウイルスの検査で陽性反応を示した人がいれば、その人物が接触していた全ての人に連絡を取り、自己隔離を勧めるのだ。

徹底するには医療従事者を大量に動員すべきだと、米ジョンズ・ホプキンズ大学医療安全センターのクリスタル・ワトソン助教は提唱する。サイエンス担当のフレッド・グタールがワトソンに話を聞いた。

――大規模な作戦を迅速に実行するためには、何が必要なのか。

アメリカの公衆衛生政策史上、前例のない取り組みを実行しなくてはならない。公衆衛生に携わる人を大幅に増やす必要がある。

エボラ出血熱の感染が拡大したとき、(西アフリカの)リベリアは約1000人を雇って接触追跡を行った。この活動が目覚ましい成果を上げ、国防省が仮設病院を設営したときには感染者がかなり減っていた。新型コロナウイルスでも、既に同様のことを実施している国がある。

――具体的には、何を行うのか。

接触追跡の担当者が感染者に電話し、誰と接触していたかを尋ねる。そして、その人物の友人や家族、公共スペースで接触した可能性のある人たちにも連絡を取る。

――テクノロジーが接触追跡の役に立つ可能性は?

(スマートフォンやアプリなどの)テクノロジーは、感染者がスーパーマーケットに行ったときに、近くにいたかもしれない人たちを割り出すのに役立つ可能性がある。

――プライバシーの問題についてはどう考えているか。

プライバシーを全面的に守りたいという気持ちは理解できるが、感染拡大を制御するには、現実に接触追跡に役立つアプリを用いなければ意味がない。公衆衛生機関は、これまでも極めて機密性の高い情報を使って接触追跡を行ってきた。こうした業務には慣れている。

――有効な接触追跡を行うためには、1日にどれくらいの検査を行う必要があるのか。

少なくとも週当たり200万人に検査を行う必要があるだろう。ただし、地域ごとの感染状況の変化により、この数字も変わっていく。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

LSEG、金融データをチャットGPTに統合へ AI

ビジネス

午後3時のドルは155円前半、日銀利上げ見通しで一

ワールド

香港当局、高層住宅火災受け防護ネット全面撤去へ

ワールド

インドネシア、採掘規則違反企業を処分へ 洪水で死者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中