最新記事

感染症対策

ギリアドの新型コロナウイルス新薬、治験で回復速度31%早まる ファウチ所長「意義大きい」

2020年4月30日(木)09時19分

トランプ米大統領は29日、ギリアド・サイエンシズが新型コロナウイルス感染症治験薬「レムデシビル」の臨床試験で有望なデータを得たとするニュースを歓迎すると述べた。写真はトランプ氏と米国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長。22日撮影(2020年 ロイター/JONATHAN ERNST)

米国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所は29日、ギリアド・サイエンシズの新型コロナウイルス感染症治療薬候補「レムデシビル」の臨床試験で、患者の回復スピードが31%早まったとの暫定結果が得られたと明らかにした。

同研究所のファウチ所長は、この結果は「非常に意義が大きい」と述べ、レムデシビルは新型コロナウイルス感染症の「標準的な治療薬」になる可能性があると述べた。

同研究所が新型コロナ感染症の入院患者1063人を対象に実施した臨床試験では、レムデシビルを投与した患者が11日で回復したのに対し、プラセボ(偽薬)を投与した場合は15日を要した。

ファウチ所長はホワイトハウスで記者団に「極めて重要」な結果だと強調した。現状はエイズウイルス(HIV)の治療薬開発で苦戦していた1986年の状況に類似しているとも述べた。

米食品医薬品局(FDA)は、レムデシビルをできる限り早期に患者に届けるためにギリアドと協議していると明らかにしたが、同薬の認可計画に関してはコメントを控えた。

トランプ米大統領は、FDAがレムデシビルの緊急使用許可を出すことを望むかを問われ、「できる限り早期に対応してほしい」と述べた。「全て安全である必要はあるが、特に効果があるものについては非常に早期の承認を望む」とした。

ギリアドの株価は5.7%高で引けた。年初からは27%上昇している。

政府の治験とは別に、同社はこの日、臨床試験で早期にレムデシビルを投与された入院患者の62%が退院したとし、治療の早い段階でレムデシビルを投与すれば、患者の改善が望める可能性が示されたと発表した。試験はプラセボ(偽薬)比較なしに重症の入院患者397人を対象に行われた。

国立アレルギー感染症研究所の試験は大規模で、実薬と偽薬を分からないようにする二重盲検の手法によるランダム化比較試験のため、治療の第一線に立つ医師からも結果が注目されていた。

ギリアドは今月、現在の供給可能量であるレムデシビル150万回投与分を病院に寄付する用意があると表明している。治療の期間にもよるが、14万人以上の患者を治療できる量だ。商用化にはFDAの承認が必要となる。

同社に今後の供給計画について問い合わせたが、これまでのところ回答はない。

国立アレルギー感染症研究所の試験ではまた、レムデシビルを投与された患者の死亡率は8%と、偽薬投与者の11.6%を下回った。ただ、統計学的に意義のある差ではなかった。

同試験の首席研究者は前週、ロイターのインタビューで結果の全容が早ければ5月半ばまでに明らかになる可能性があると述べていた。

一方、米シンクタンク、ウィルソン・センターのグローバル・フェロー、ローレンス・アルトマン氏は、暫定試験結果はレムデシビルの有効性について「わずかな望み」をもたらしているが、「他の研究のまちまちな結果との比較」によるさらなる科学的分析が必要だと指摘した。

同日に医学誌ランセットで発表された中国の臨床試験のデータからは、レムデシビル投与による効果は確認されなかった。プラセボ(偽薬)投与に比べ、レムデシビルを投与された重症の入院患者の症状の回復は早まらなかったという。

ギリアドは新型コロナの中等症の入院患者を対象とする試験も実施しており、結果の公表は来月になる見通し。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・韓国そして中国でも「再陽性」増加 新型コロナウイルス、SARSにない未知の特性
・英、子供が炎症で死亡 川崎病と似た症状も、新型コロナウイルスとの関連調査へ
・東京都、新型コロナウイルス新規感染47人確認 都内合計4106人に
・ベルギーの死亡率が世界一高いといわれる理由、ポルトガルが低い理由.......


20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や

ワールド

アングル:歴史的美術品の盗難防げ、「宝石の指紋」を

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中