最新記事

サイエンス

「精子減少で人類滅亡」のウソ

Does a Declining Sperm Count Spell the End of Humanity?

2017年8月9日(水)21時45分
ロナルド・ベイリー(米リーズン誌サイエンス担当)

それでは、精子の数の減少が原因で人類が滅亡する日は近いのだろうか?

恐らくそんなことはない。

2013年、ニューヨークのプレスバイテリアン病院と米ワイルコーネル医科大学で生殖医学を専門とするハリー・フィッチと彼の同僚は、1992年以降に発表された精子の質に関する35件の研究結果を包括的に分析し、精子の数をめぐるデータのトレンドを調べた。

フィッチらは1万8109人の男性を対象にした8件の研究で、精液の質の低下がみられたと報告した。一方11万2386人を対象にした21件の研究で、精液の質は同じ、もしくは良くなっていた。さらに2万6007人を対象にした6件の研究は、曖昧もしくは矛盾する結果だった。

精子の数はまだ十分

フィッチに言わせれば、要するに「世界中で精子のパラメーター値が下がっているという主張は、まだ科学的に証明されていない」のだ。

フィッチは、研究チームは複合的な原因を考慮しようと努めた割に、肥満の増加やマリファナの服用、座ることの多い生活スタイル、精巣の温度上昇など元に戻すことも可能な要因が精子の減少を引き起こしているかもしれないことを十分に考慮しなかったのではないか、と言う。

世界保健機関(WHO)によれば、正常で受精可能な精子の濃度は1ミリリットル当たり1500万だ。今にも人類が滅亡しそうな印象を与える見出しは、少々大げさだろう。

(翻訳:河原里香)

This article first appeared on Reason.com.
Ronald Bailey is a science correspondent at Reason magazine and author of The End of Doom (July 2015).



【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!

ご登録(無料)はこちらから=>>


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用統計、4月予想上回る17.7万人増 失業率4

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中