最新記事

為替

円高になると株安になるのはなぜ? 為替と株価の奇妙な関係

2018年6月22日(金)18時17分
株の窓口

円高で日本株が売られる理由

さて、円高になると、日本企業は下記のような2つの心配事をします。

1.海外で自社製品が売れなくなってしまう(シェア低下)
2.海外売上のドルを円に両替したら雀の涙だ(為替差損)

1.海外で自社製品が売れなくなってしまう(シェア低下)

円高によって、あらゆる製品やサービスが海外で売れなくなってしまいます。たとえば、こんな状況が起こることが考えられます。


アメリカ在住のある少年は、近所のおもちゃ屋で公式ポケモンカードを1枚1ドルで買うのが楽しみでした。ところがある日、同じカードが1枚2ドルになっていました。少年は帰宅し、父親に懇願します。父親は翌日、子供だましの不当な値上げだとクレームに行きましたが、おもちゃ屋は「円高(ドル安)で卸売価格が2倍になったのだ」と説明します。父親は仕方なく店を出ると、路地裏の小さな露店で非公式のポケモンカードを購入し、息子に渡しました。

この短い作り話には、円高が日本企業にもたらす様々なマイナス要素が含まれています。

商品が売れなくなるだけでなく、値上げによる業界への不信感と顧客離れ、粗悪な偽造(コピー)品の普及と、さらには同業種間のシェア低下も懸念されるのです。特に販売シェアの低下は国際競争力を失うことと同じであり、企業の成長戦略に大きく影響してくる可能性もあります。

2.海外売上のドルを円に両替したら雀の涙だ(為替差損)

海外で事業を展開する日本企業は、決済にドルを使っています。そのため現地の売掛金だけでなく、日頃からある程度のドルを保有していることも多くあります。円高が大きく進行すると、それらのドル資産を円に換金したときに"雀の涙"ほどに目減りしてしまうのです。

1ドル=100円のときに1億ドルの売上があったとしましょう。この時点で円に換金すれば100億円です。しかし、急激に円高が進んで1ドル=50円になると、この売上は50億円になってしまいます。何もしていないのに、為替相場の変動だけで売上が半減してしまうのです。

このように、円高になると「シェア低下」「売上減少」「為替差損」といった懸念が生まれます。これらが、海外輸出を主な収益源としている企業の業績に対する不安材料になり、株式が売られることなるわけです。

なぜ日経平均が下落するのか?

円高が輸出に不利に働くことはわかりました。しかし裏を返せば、海外製品を円高の力で安く仕入れられるようにもなります。原材料が値下がりすれば製造コストを抑えることにもつながり、企業の業績アップに貢献すると期待できます。

つまり市場全体を見渡した場合、円高懸念によって株式が売られる輸出企業もあれば、円高を好感して買われる輸入企業もあるということです。それなのになぜ、円高になると日経平均株価が下がるのでしょうか? それは、日本の輸出企業と輸入企業のアンバランスに原因があります。

■日経平均株価の構成銘柄

日本の株式市場を代表する株価指数である「日経平均株価」は、実は、文字どおり全上場銘柄の株価を平均したものではありません。東証1部に上場している全銘柄(1990銘柄/2016年11月10日現在)から選出した225銘柄の平均株価です。

円高によって日経平均株価が下がるのは、この225銘柄に、ハイテク産業や自動車産業といった輸出企業の割合が多いからなのです。特に自動車産業は、企業数こそ業種別7位に甘んじていますが、いずれも企業規模が大きく、円高の影響を強く受けるため、これらの企業の株価の変動が日経平均株価を大きく動かすことになります。

業種別・日経平均株価採用銘柄数(2016年11月10日現在)
1.電気機器(29社)
2.化学(17社)
3.機械(16社)
4.非鉄金属製品(12社)
5.食品(11社)/銀行(11社)
7.自動車(10社)

株価の変動が指数に与える影響を「寄与度」と言いますが、日経平均は225銘柄の「平均」ですので、単純に株価が高いと寄与度も大きくなります。そうした株価の高い銘柄(値がさ株)が輸出企業に多いことも、円高が日経平均を押し下げる原因のひとつになっています。

こうして、為替の影響を強く受ける輸出企業の株価が、日経平均を大きく動かす結果になるのです。そのため、円高でこれらの銘柄が売られて日経平均が下がると、日本株全体が下落するかのようなイメージをもつ人もいるかもしれません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中経済関係は安定、来月の首脳会談で維持へ=UST

ワールド

米イラン協議、パキスタンの仲介正念場に サウジへの

ビジネス

短期インフレ期待上昇、ガソリン価格伸び見通し4年ぶ

ワールド

トランプ氏「今夜文明滅びる恐れ」、イラン交渉期限迫
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 4
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 5
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 6
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 9
    「人間の本性」を見た裁判官が語った、自らの「毒親…
  • 10
    スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のア…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中