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見えない食品ロスを「主役」に――服部栄養専門学校と神奈川県立中央農業高等学校が拓く食の未来

2025年12月17日(水)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
調理実習の指導を行う横尾博志氏ら、服部栄養専門学校のスタッフ

調理実習の指導を行う横尾博志氏ら、服部栄養専門学校のスタッフ

<「漬物以外に、おいしい食べ方はないですか?」──摘果メロンという見えない食品ロスを「主役」に変えようと、服部栄養専門学校と神奈川県立中央農業高等学校の挑戦が始まった>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。

私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇


私たちの食卓には一年を通じて多様な野菜や果物が並ぶが、その裏側では、生産から流通、消費に至るまでの過程で、本来なら食べることができるにもかかわらず活用されずに終わる食材が少なくない。

とりわけ生産段階では、品質の安定を図るために行われる作業が、結果として食品ロスを引き起こすことがある。形や大きさが規格に合わない農産物や、栽培の途中で間引かれる摘果などは、いわば「見えない食品ロス」である。

そうした「品質を守るため」という生産側の事情と、「まだ食べられるのにもったいない」という生活者の感覚との間には、いまだ埋まらないギャップがある。

この課題に対し、食の専門教育機関と農業高校が連携し、解決の糸口を探る取り組みが始まっている。学校法人服部学園 服部栄養専門学校(以降、服部栄養専門学校)と神奈川県立中央農業高等学校(以降、中央農高)が連携して進める、「摘果メロンを調理の力で活用する」という取り組みである。

摘果メロンというこれまで光の当たらなかった存在に、「食育」と「SDGs」という視点を重ね、生産現場・専門家・家庭の食卓までを一本の線でつなごうとする試みだ。

食のプロと農業高校が育む、新しい「食育」のかたち

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東京都渋谷区千駄ヶ谷にある服部栄養専門学校の外観

服部栄養専門学校は、1939年の創立以来、4万人を超える卒業生を食の世界に送り出してきた、食のプロを養成する専門学校だ。

栄養士・調理師を育成する専門教育機関として、同校が教育の中核に据えてきたのが「食育」である。

同校前校長・服部幸應は、「食育」の提唱者として学校教育にとどまらず社会全体への普及をめざし、「安全・安心・健康な食を選ぶ力(選食能力)を養う」「共食を通じて衣食住の伝承としつけを行う」「食糧問題やエコロジーなど、地球の『食』を考える」という三つの柱で定義してきた。

食品ロスの問題や「もったいない」の意識を含むこれらの食育の柱は、食育基本法やSDGs、とりわけ目標12「つくる責任、つかう責任」とともに教職員の行動指針となっており、校内ではすべての学科での食育授業というかたちで実践されている。

これらの食育の姿勢と、「食」や「農産物」を理解した有為な職業人を育成するという教育目標で結ばれているパートナーが、今回のプロジェクトをともに進める中央農高だ。両校は「高専連携」を締結し、「食」と「農」に通じた人材を育てることを共通の目標として、実践的な学びを通じて連携を深めてきた。

捨てる果実が「主役」になるまで

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教職員たちも衝撃を受けたという逸品「摘果メロンと牛肉煮 青梗菜添え」

プロジェクトの出発点となったのは、中央農高が実践的な学習の一環として行っていたマスクメロンの栽培だった。

生徒たちは、自らが育てたメロンを無駄にしたくないという思いから、摘果メロンを自宅に持ち帰って漬物にするなどの工夫を続けていたという。

「漬物にする以外に美味しい食べ方はないですか?」――こうした生徒の声を受け、中央農高の教員は、「摘果メロンをもっとおいしく使える方法をプロの目線でアドバイスしてほしい」と、連携校である服部栄養専門学校に相談した。

この相談を機に、食品ロス削減と生徒の学びを両立させる具体的な連携が本格化していく。

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