見えない食品ロスを「主役」に――服部栄養専門学校と神奈川県立中央農業高等学校が拓く食の未来
服部栄養専門学校は廃棄予定の果実に可能性を見出し、2025年5月にはメロンの摘果時期に合わせて試作を実施、翌6月には高校内での調理実習へと展開した。
試作とレシピ開発では、家庭での再現性を重視した日本料理と、高級食材や専門的な技法も取り入れた中華料理の双方からアプローチし、摘果メロンの新たな可能性を探った。

高校内で行われた調理実習の指導には、服部栄養専門学校 調理技術部長で、かつて「龍天門」(恵比寿ウエスティンホテル)の総料理長を務めた横尾博志氏があたった。
中華料理で瓜類を扱ってきた豊富な経験を生かし、摘果メロンを使用した8品以上のレシピを提供。その中でも「摘果メロンと牛肉煮 青梗菜添え」は特に好評で、メインの牛肉よりも先にメロンが食べ尽くされたという。
捨てられるはずの食材が「主役」になり得るという実感が、摘果メロンへの見方を一変させ、工夫と発想次第で食材の可能性は広がるのだということを、高校生や教員に強く印象づけた瞬間だった。
小さな気付きから始まる、循環型の未来
今回の学校間連携では、プロの料理人が在籍する専門学校の強みと食材を大切にしたいという両校の思いが重なり、廃棄予定だった摘果メロンに新たな価値をもたらした。
現在、服部栄養専門学校は中央農高以外にも様々な高校と同様の連携を築いており、今後は全国各地の廃棄予定食材や、その土地で獲れるものの一般にはまだ知られていない農産物や海産物に対象を広げていきたいと構想している。
こうした学びを重ねた生徒が、やがて生産者など食に関わる職業に就いた際には、自らの経験をもとに、廃棄物を減らす多様な提案を行う立場になっていく――廃棄される食材の食べ方を考えることが、将来の消費者への発信にもつながっていく好循環をつくろうとしているのだ。
摘果メロンを入り口に、食品ロスの削減と「もったいない」の意識、そして食育の実践を同時に進める今回のプロジェクト。こうした取り組みを通じて、生徒たちが、これまで廃棄されていた食材にも新たな役割を見出せることを実感しながら学ぶことが、未来の食の現場で新たな提案を生み出す力となっていくはずだ。
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