かつて日本は「移民送出国」だった...祖先を探す「海外ウチナーンチュ」を繋ぐ「図書館の可能性」
ACROSS BORDERS, OKINAWAN ROOTS SPEAK
サービス開始のきっかけは2016年、ある70代の男性が来館したことだった。男性はハワイへの移民3世で、日本への旅行を機に祖父母の資料がないかと訪ねてきたのだ。手掛かりは名前の発音と生年月日だけ。
職員が膨大な渡航名簿を数時間かけて調べ、やっとのことでたった一行の記録を見つけ出した。それでも、彼は泣き崩れんばかりに喜んだという。この出会いが「祖先を探したい」という切実なニーズを図書館に確信させた。
同年、沖縄県で5年に1度開催される国際交流イベント「世界のウチナーンチュ大会」に調査ブースを構えると長蛇の列が。ウチナーネットワークを継承・拡大するという県の理念とも合致し、2018年には正式な事業として予算化され、専門的な調査体制を整えた。
現在、依頼は年間数百件に上り、ハワイやブラジルで開かれる沖縄フェスティバルにも出張ブースを設けている。
図書館が国際的なハブに
活動を支えるのは、国境を超えたパートナーシップだ。世界各地の沖縄県人会が、現地での情報提供や調整役を担う。今年8月には、ハワイ沖縄系図研究会と、移民関係資料の提供や共同調査を取り決めた協力覚書も締結した。
一方で、海外資料の収集は急務だと、同館で移民関係事業を担当する小波津(こはつ)真紀子は危機感をあらわにする。





