朝食ビュッフェと空室で子どもの貧困に立ち向かえ...スーパーホテルが取り組む社会価値の「転換」
スーパーホテルが提供する「モーニング子ども食堂」の様子。子どもはもちろん、一般客からの評判も高い
<子どもの貧困や体験格差といった社会課題に、スーパーホテルは、ホテル資源を活かした現場主導のSDGsモデルで立ち向かっている>
日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。
私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
日本では子どもの相対的貧困率が高い。等価可処分所得が中央値の50%未満となる世帯が占める割合を言い、9人に1人の子どもが基本的な衣食住にさえ困っているという。それだけでなく、貧困から生じる学びや体験の格差は、次世代にまで深刻な影響を与える。
特に、朝食を取ることができない、あるいは孤食状態にある子どもたちは、心身の発達だけでなく、社会とのつながりにおいても不利な状況に置かれている。
また、貧困率がとりわけ高いひとり親家庭では、経済的・時間的な制約から、旅行や外食といった非日常的な体験を提供する余裕がなく、家庭全体のウェルビーイングにも影を落とす。
こうした社会課題に対し、意外にもホテル業界から、解決に挑む企業が現れた。国内外に177店舗(2025年8月末時点)を展開し、非日常を提供する側面を持ちながら、地域との結びつきを重視する株式会社スーパーホテルだ。
既存の事業で社会課題の解決を目指す
2024年2月、スーパーホテルで「イノベーション委員会」という社内プロジェクトが発足した。そして委員会で出たアイデアをきっかけに、子どもの貧困や体験格差、社会的孤立といった課題に対して、ホテルならではのリソースを活用した解決策が模索され始めた。
そこから生まれたのが「モーニング子ども食堂」と「ウェルビーイングステイ」という、地域と未来を見据えた新しいモデルだ。
「モーニング子ども食堂」は2025年3月、スーパーホテル東京・赤羽駅南口で始まった。北区在住の小中学生を対象に、ホテルの朝食ビュッフェを無料で提供。統括支配人の「朝食を食べられない子どもたちを笑顔にしたい」という想いから生まれたこの活動は、子どもの孤食や欠食の解消を目指して行われた。

「ウェルビーイングステイ」は、2025年4月に奈良市との官民連携でスタート。奈良市のひとり親家庭に対し、空室の多い日に一泊3000円の特別料金で宿泊体験を提供している。天然温泉や朝食ビュッフェといった非日常体験を通じ、親子の心身のリフレッシュを支援する。







