ビール製造時の副産物で農業課題を解決へ...アサヒバイオサイクルが創り出す農業の「未来」
アサヒバイオサイクルは自社技術を用いて、日本だけでなくケニアでもコメ作りを支援している
<従来「副産物」と見なされてきた原料で、新たな農業の未来を切り拓き、世界中の食料問題に立ち向かう>
日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。
私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
近年、食料問題が世界で深刻化しており、世界中の政府や企業がその解決に向けてさまざまな努力を行っている。その中で、ビール製造時の「副産物」を用いて栽培コストを下げることで、食料問題を解決しようとしているのがアサヒバイオサイクル株式会社だ。同社がバイオのチカラで創り出そうとしている「未来」とは──。
ビール製造時の副産物が、栽培コストを大きく下げる?
アサヒバイオサイクルの経営ビジョンは、「バイオのチカラで未来を創る。」である。アサヒグループの一員として、アグリ事業、アニマルニュートリション事業、環境事業を展開している。
注目すべきは、アグリ事業における「ビール酵母細胞壁由来の農業資材」の開発とその応用だ。
同社が提供する農業資材は、アサヒグループが長年研究してきたビール製造時の副産物であるビール酵母細胞壁を活用したもので、種子の発芽と根の健全な発達を助け、植物のストレス耐性と成長を高める効果を持つ。
特に、水田管理の労力とコストを大幅に削減できる「節水型乾田直播栽培」において高い有効性が示されており、2024年に社会課題化したコメ不足への対応策としても注目されている。
通常の水田栽培では発芽させて15~20cmまで成長させた苗を水耕地に植えるが、節水型乾田直播栽培では、稲の種子を直接撒いて発芽させる。水張り、田植えなどが不要となり、水田管理の労力を大幅に削減できるが、収量が安定しないという課題があった。
ところが、同社がヤマザキライスの協力を得て行った実証実験では、「ビール酵母資材を使った節水型乾田直播」は「通常の水田栽培」と同等の収量を確保することができたばかりか、温室効果ガス(GHG)を約65%削減する成果まで得たのである。






