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人も松も育む「マツタロウの森」とは? 「松の恵み」を未来につなぐ荒川化学工業の取り組み

2025年10月21日(火)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
岡山県小田郡矢掛町の「マツタロウの森」で子どもたちが松の苗を植える様子

「マツタロウの森」で子どもたちが松の苗を植える様子 

<印刷物やテープの裏に隠れた松の恵み。ロジンに支えられた生活を次世代へ受け渡すため、荒川化学工業は地域と手を取り、アカマツ再生と環境教育の循環モデルを築き始めた>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。

私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇

戦後から全国に広がった松枯れ病は、いまも日本最大の森林病虫害として各地の景観と生態系に影を落としている。

産業とも無縁ではない。私たちの暮らしに身近な印刷物や接着剤、粘着テープなどには「ロジン」が使われており、その主原料となるのが松の樹脂(松やに)である。

つまり、森林の劣化は、持続可能な素材供給という側面からも見過ごせない課題なのだ。自然の恵みを未来につなぐには、原料を使う企業自らがその再生に関与する仕組みが必要とされている。

この課題に正面から向き合っているのが、2026年に創業150周年を迎える素材化学メーカー・荒川化学工業だ。

ロジンを事業のコアとする同社は、素材の未来を守るために森へ入り、地域の子どもたちとともに自然を学び、守り育てる活動を続けている。

資源の恵みを次世代へ

荒川化学工業は、ロジンを主原料とした製紙用薬品や印刷インキ用樹脂、粘着・接着剤用樹脂、IoTを支える電子材料などを開発・提供し、日常生活の「当たり前」を支える企業である。その中核にあるのが「松やに」──松の恵みだ。

同社は2016年、創業140周年の節目に岡山県小田郡矢掛町で会社のイメージキャラクターの名前を冠した「マツタロウの森」を開園。ここでも、かつて山肌を彩ったアカマツの衰退が進み、象徴的な緑が失われつつあった。

この場所で同社は、10年間で約1万本の苗を植えることを目標にしており、地域と連携し、松枯れ病に強い抵抗性アカマツの植樹を実施。さらには、子どもたちの体験学習の場としても育ててきた。

その中核をなすのが、2023年度に日本で初導入された「YUNGA Forests Challenge Badgeプログラム」だ。

国際連合⾷糧農業機関(FAO)傘下のYUNGA(若者と国連グローバルアライアンス)が推進する教育プログラムの中で、同社は矢掛小学校の5年生を対象に、年3回(6月・9月・11月)の体験イベントを実施している。

子どもたちは森を歩き、自然の景観と向き合い、教室で森林の役割やロジンの重要性と化学の楽しさを学ぶ。

そしてアカマツの植樹や火起こしを通じて、森林の恵みと脅威の両面を体感する。修了者にはバッジが授与され、持続可能性への理解が形として残る。

自然の恵みと脅威の両面について学ぶ子どもたち

キャンプファイアでは、燃焼の仕組みを学びながら、自然の恵みと脅威の両面について学ぶ

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