最新記事
SDGsパートナー

人も松も育む「マツタロウの森」とは? 「松の恵み」を未来につなぐ荒川化学工業の取り組み

2025年10月21日(火)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

「マツタロウの森」から始まる循環型教育モデル

出前授業として行われる「マツタロウ&ロジーナ教室」の様子

出前授業として行われる「マツタロウ&ロジーナ教室」の様子

この取り組みは、地域との密な連携により成り立っている。

矢掛町役場や教育委員会、地元の学校との協議を重ね、同社の経営企画部員が中心となって運営を担う。教員免許を持つ研究員や、ボーイスカウト経験者の社員も加わり、専門性と実践性を融合させたプログラムが設計されている。

岡山に工場があることや県木がアカマツであること、さらには岡山がかつて日本有数の松やにの産地だったという背景を踏まえてプロジェクトの立ち上げを主導した常務取締役執行役員の延廣徹氏は、「松を通じた未来につながる取り組みでお役に立ちたい、地域の皆さんと交流を深めたいという思いがあった」と語る。

活動は2025年度で3年目を迎え、これまでに子どもたちと共に累計約150本のアカマツを植樹してきた。

参加した児童からは「森のことを考えるようになった」「自分の手で植えられて嬉しい」といった声が寄せられ、学びが関心や行動へと確実につながっている。

取締役執行役員で経営企画本部長の冨宅伸幸氏は、「今後の課題としては、関係者が代わっても思いをつないで継続できる取り組みとすることや、松の植林地の確保、さらに他の地域への展開や地域への貢献をどこまで広げていけるかを模索している」と語る。

企業のSDGs推進を一過性で終わらせないためのモデルづくりが、すでに動き出している。

荒川化学工業のこの挑戦は、資源を使う立場から「資源の未来を育てる当事者」へのシフトと言える。素材の力を地域と結び、教育と協働によって再生の循環をつくり出すこの取り組みは、矢掛町の風景だけでなく、社会のレジリエンスをも静かに強化していくに違いない。

◇ ◇ ◇

アンケート

どの企業も試行錯誤しながら、SDGsの取り組みをより良いものに発展させようとしています。今回の記事で取り上げた事例について、感想などありましたら下記よりお寄せください。

アンケートはこちら

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中