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SDGsアワード「学生部門賞」とは

2025年8月6日(水)18時55分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室
慶應義塾大学の蟹江研究室「企業評価班」の学生たち

2025年3月のニューズウィーク日本版「SDGsアワード」授賞式に出席した慶應義塾大学の蟹江研究室「企業評価班」の学生たち PHOTOGRAPH BY NAOYUKI HAYASHI

ニューズウィーク日本版では「SDGsアワード」プロジェクトの一環として、2024年、慶應義塾大学SFC研究所と共同研究を行いました。

「中小企業と大企業が同じ条件下で評価・判断を下すことができる」新たな評価指標を作ることを目的としたもので、同大学大学院・蟹江憲史教授の研究室と編集部が共同で実施したものです。

その成果が、昨年度のニューズウィーク日本版「SDGsアワード」で新設された「学生部門賞」につながりました。

昨年度の「SDGsアワード」では、計86のSDGs事例を環境、社会、経済、脱炭素、地域課題の5部門に分類しました。パートナー企業も投票し、編集部と外部審査員である蟹江教授が精査した上で、各部門の受賞企業を選出。その中から最優秀賞も選んでいます。

●SDGsアワードの概要についてはこちら

しかし、学生部門賞は、それとはまったく異なるプロセスにより選考されました。

慶應・蟹江研究室で企業評価を行う学生たち

慶應義塾大学の蟹江研究室では、ゼミ生たちが各々の関心に基づいてグループに分かれ、プロジェクトに取り組んでいます(個人研究を選ぶ人もいます)。昨年度は、化粧品からファッション、途上国支援、箱根駅伝まで、さまざまなプロジェクトの班がありました。

その1つが「企業評価班」で、これは2021年から代々受け継がれ、企業のサステナビリティ評価に取り組んできたグループです。昨年度のメンバーは7~8人でした(時期により増減あり)。

企業評価班は2023年度までは、日本の時価総額上位100社を対象に、公開情報を基にした評価を行っていました。

就職活動などを行う学生が企業のサステナビリティを見る上で、重視するポイントはどこか。どうすれば学生が企業に非財務情報のさらなる開示を促せるか。そういったことを念頭に、独自の評価項目を作成していたそうです。

昨年度はニューズウィーク日本版との共同研究により、企業評価班の活動内容が変わりました。

サステナビリティレポートや統合報告書を出しているような大企業だけでなく、中小企業を含む幅広い企業を対象としたサステナビリティ指標を決める研究と位置づけ、学生が主体性を持って、実際に企業へのインタビューを行い、ニューズウィーク日本版「SDGsアワード」の「学生部門賞」受賞企業選定も行ったのです。

共同研究/学生部門賞の3つのステップ

共同研究/学生部門賞には、3つのステップがありました。

【先行研究 5~8月】
企業評価班の学生たちはまず、他のSDGsやサステナビリティに関わるアワードを調べ、その評価対象や評価方法を研究しました。

次に、これまでの企業評価班の活動と、ニューズウィーク日本版「SDGsアワード」との相違点や類似点、アワードの意義を整理。蟹江教授の指導、ニューズウィーク日本版の森田優介(デジタル編集長兼SDGs室長)との協議も踏まえ、活動の指針を立てました。

【一次審査 9~11月】
一次審査はインタビューシートにより実施しました。学生の興味関心を含んだ独自のインタビューシートが作成され、編集部が対象企業に対し、研究への協力とインタビューシート記入を依頼しました。

対象企業は、ニューズウィーク日本版「SDGsアワード」のパートナー企業のうち、早期エントリーの企業を指します。最終的にその数は、44社・52事例になりました。

「SDGsアワード」は10月末までをエントリー期間としていますが、共同研究/学生部門賞は独自の選考プロセスを必要とするため、そのうち8月末までにエントリーしていただいた企業のみを対象としました。

その後、各社のインタビューシート回答は、編集部が企業名を伏せたものに加工したうえで、企業評価班に共有。企業名が分からない状態で、学生たちがそれぞれ回答内容を評価しました。

蟹江教授、森田と合議を行い、二次審査に進出するノミネート企業11社を選出しました。

【二次審査 11~2月】
ノミネート企業11社の社名を学生たちに伝え、企業研究に着手してもらう一方、ノミネート企業には、二次審査としてのオンラインインタビューへの協力を依頼しました。

ノミネート企業は以下の11社です。

・株式会社星野リゾート
・山一金属株式会社
・中日本カプセル株式会社
・和光紙器株式会社
・hap株式会社
・株式会社折兼
・大日本印刷株式会社
・株式会社日建ハウジングシステム
・生活クラブ事業連合生活協同組合連合会
・今治造船株式会社
(残り1社は非公開)

学生たちが各社向けの質問票を作成し、それぞれ編集部員の同席のもと、企業評価班から3人ずつが出席し、1時間のオンラインインタビューを実施しました。

その後、11社分の録画を企業評価班のメンバー全員が視聴し、各自が点数付けをして評価を実施しました。蟹江教授、森田と合議を行い、「SDGsアワード」学生部門賞の受賞企業を選出。3月に開催した「SDDsアワード」授賞式で受賞企業を発表しました。

ノミネート企業11社については、総評に加え、評価した点や気になった点を記載したポートフォリオを学生たちが作成し、その後、編集部を通じて各社に渡しています。

昨年度の「学生部門賞」受賞企業、和光紙器のポートフォリオはこちらよりご覧ください

今年も継続、協力いただけるパートナー企業を募集中

この共同研究は学生たちにとって、研究室を飛び出し、実際に企業と向き合う機会、またその成果を対外的に発表する機会となりました。

実際にプロジェクトに取り組んだ学生たちからは、以下のような感想をもらいました。

●評価対象企業の幅が中小企業にも広がったことで、豊富なリソースがある企業のみではない評価対象へと変化した。その中で、事業活動との親和性などを踏まえた活動を行っている企業が多い印象を受けた。
●地域や地元のステークホルダー密着型の取り組みが比較的多い、ターゲットや目的に対してアプローチできている取り組みが多いという印象を受けた。
●インタビューでの調査ということもあり、質問項目選定の難しさや質問の意図を正しく伝えるという点には苦慮した。
●明確な採点基準・採点項目がないこともあり、最終的には合議形式で受賞企業を選定したが、誰もが納得のいく結果を導き出すのは一筋縄ではいかないものだと感じた。一方で、 その合議の中でも新たな気づきなどを得ることもできた。

編集部にとっても、SDGsを専門に研究する若者たちとディスカッションをし、さまざまなインプットを得られたことは大きな収穫となりました。

SDGsは未来に向けた取り組みであり、「SDGsアワード」に若者たちの知見を取り込みたいと考えていましたし、パートナー企業からもそういった声を頂戴していたので、企業の課題解決に多少なりとも役立てたのではないかと考えています。

実際、11社のノミネート企業からも、オンラインインタビューでの質疑応答が刺激になった、企業側から質問する機会も設けてもらったことがよかった、といった声を頂戴しました。

ニューズウィーク日本版「SDGsアワード」は、3年目となる今年も、この共同研究/学生部門賞を継続しています。ぜひ8月末までのエントリーをお待ちしています。

●SDGsアワードの概要についてはこちら

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