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「小さな町から大きな目標へ...」北海道下川町からSDGsを推進する清水 瞳さんの挑戦

2025年2月20日(木)13時00分
酒井理恵
北海道下川町でインターンシップ後、そのまま下川町役場に就職。現在は下川町に在籍しつつ、環境省の仕事に従事する清水 瞳さん

北海道下川町でインターンシップ後、そのまま下川町役場に就職。現在は下川町に在籍しつつ、環境省の仕事に従事する清水 瞳さん


SDGsの先進自治体である北海道下川町でインターンシップ後、そのまま下川町役場に就職。現在は下川町に在籍しつつ、環境省の仕事に従事する清水 瞳さん。原体験から下川町に魅せられ、町民一体となって世界の目標達成を目指している。そんな彼女が考える「小さな町だからできること」とは?

──SDGsに興味をもったきっかけを教えてください。

私には両親の地元である長野県、4歳から10歳まで暮らしていたアメリカのテネシー州と、2つの故郷があります。両方とも静かな自然をもつ田舎町で、幼い頃から山登りや山菜採りなどに親しんでいました。

公害の都市再生の優良事例として取り上げられているテネシー州チャタヌーガ市が近くにあったため、美しく再生され、多くの人が訪れる街の変化を肌で感じることで、環境問題とまちづくりに興味をもつ大きなきっかけとなりました。

10歳で長野県に帰ってきた後、よく目にしたのはリニア中央新幹線開発に対する反対運動です。自然や生活環境、経済など、利便性にとどまらない様々な影響を直接的、間接的に与える様子に、子どもながらに「難しいな」と感じたことを覚えています。

この経験により、「言葉で行動変容できないか?」という問題意識で、大学は慶應義塾大学に進学しました。社会学で社会における言葉の役割や、アイデアを引き出し、議論、合意形成をするための手法などを学び、3年生で蟹江憲史教授のゼミに入りました。

SDGsも言葉というツールで今までもっていた「モヤモヤ」や課題を世界各国に共有して、目標を達成しようとしています。異なった価値観を持つ人同士のコミュニケーションツールとして使える点に共感しました。

私自身もSDGsを研究したことで、1つの物事を見る際、いろんな視点から考えられるようになったと思います。

──大学では、どんなテーマで研究しましたか?

私は3つほど研究テーマを持っていたのですが、メインはまちづくりとSDGsです。育ってきた環境の影響もあり、地方のまちづくりでSDGsという世界目標をどのように捉えて活用しているかに興味があったからです。

兵庫県豊岡市、熊本県水俣市、岡山県西粟倉村などへ実際に赴き、自治体の方をはじめとする地域の方と交流を重ねました。

そのなかでも北海道下川町が特に研究テーマとマッチしたため、大学院に入ってから半年間のインターンシップを行い、研究を進めました。研究で大きな成果となったのは、「SDGsがあることによってまちづくりの議論がしやすくなった」という町民の声と自身の実感です。

従来、意思決定の場では「白か黒か」の二択で物事が進められることが多かったように思います。しかし、SDGsという共通言語ができたことにより、フラットに、そして広い視野で自分の住んでいる町をよりよくするために必要なことを議論しやすくなったのです。

なぜなら、1から17までの課題が明文化されていて、目指すゴールが一緒であることが理解しやすいからです。特に、町民が「誰ひとり取り残されない」ことを念頭に置き、議論を重ねていたしていただけではなく、自分をマイノリティーと感じている町民も取り残されないために声を上げるという行動変容こそが、共通言語としてのSDGsの真骨頂だと思っています。

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