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「なぜサステナビリティが必要なのか」を語れる力を育てる...和田 恵さんが学生に贈るSDGsキャリア成功の秘訣

2025年2月20日(木)11時00分
酒井理恵

──学生時代はどんな研究をされたんですか?

学部ゼミでは幅広く学び、そのまま大学院に進んで、企業とSDGsの関わり方をテーマに研究しました。大学院在学中の2017~18年当時は、企業がSDGsにやっと取り組み始めたタイミングで、国際目標であるSDGsに対し、営利目的の企業がどのように参画すべきかを探る調査を行っていました。

きっかけは、大学院1・2年生のときに参加した国連の「持続可能な開発目標に関するハイレベル政治フォーラム」です。SDGsの進捗を各国が報告する場なのですが、SDGsが示す高い目標に対して、各国の取り組みが芳しくないように感じました。SDGsは国連で全会一致で決まったにも関わらず、「意外とSDGsの実効性って低いのでは?」と思ってしまいました。一方で同国連会議において、企業参加したりと、国家以外の主体が積極的に取り組んでいる様子を目にしました。そこで、SDGsを企業が持続可能性を測り・改善させるアセスメントツールとして使うための手法を研究しました。

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国連ハイレベル政治フォーラムでの一枚

具体的には無印良品の運営母体である株式会社良品計画にてSDGsをもとに商品の社会へのインパクトを検討するプロジェクトに参画しました。各商品がSDGsの169ターゲットのどれに該当するのかを全て当てはめました。デスクトップリサーチだけではなく、夏休みの1カ月間を使い経営企画部でインターンをすることで、無印良品の理念への理解を深めながら、事業活動とSDGsをどのように結びつけるのかを考え続けました。

ほかには、沖縄県の住民とともにサンゴ礁生態系保全のワークショップを開催したり、SDGsの先進都市として知られる北海道下川町でインターンシップをしました。

──これまでにどんな仕事を経験しましたか。

新卒で入社したシンクタンクでは、研究員として日本経済の予測や、環境関連動向の解説レポートを書いていました。ただ、SDGs採択からしばらく経ち、求められることがSDGsへの理解から、SDGsの実践にシフトしてきたと感じました。そこでマクロな視点で分析するフェーズから、ミクロな視点で1つ1つ着実に事例を作っていきたいと思うようになりました。そこで外資系コンサルティング会社に転職し、企業のサステナビリティへの取り組みを支援しています。

本業以外では、慶應義塾大学SFC研究所で引き続きSDGs研究に携わらせていただいているほか、NHKのSDGsキャンペーン監修、NPO法人新宿環境活動ネット理事、沖縄県SDGsアドバイザリーボード、しながわ共創推進プラットフォーム運営協議会副委員長など、有難いことに色々と経験させていただいています。

──活動を通して、どんなことを学びましたか?

SDGsの認知度は、2015年採択当時から比べると信じられないほど上がりました。しかし、一人ひとりの行動を促すところまではまだ行きついていません。さらに、SDGsが目指す世界を実現するためには、一人ひとりが毎日ちょっと努力するだけでは足りないと思います。政府や企業が主導する大きなシステミック・チェンジ(仕組みの変革)が必要なのではないでしょうか。

ただし、SDGsが目指す変革に向けて、企業が本質的な取り組みを進めるには、まだ課題があるのではないでしょうか。日本企業の情報開示は世界的にも進んでいますが、開示だけで満足するのではなく、企業がどのようにポジティブインパクトを創出し、ネガティブインパクトを最小化していくかを、より戦略的に考える必要があります。

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