最新記事
SDGs

「なぜサステナビリティが必要なのか」を語れる力を育てる...和田 恵さんが学生に贈るSDGsキャリア成功の秘訣

2025年2月20日(木)11時00分
酒井理恵

──今後の目標を教えてください。

社会に出てからは、SDGsをふまえるとやるべきではあるが、そう簡単には変えられない現実も目の当たりにしました。例えば、「旧来型の石炭火力発電はCO2を多く排出しているから世界で廃止すべき」という意見がある一方で、雇用であったりエネルギー安全保障の面から見たら即時移行は非現実的です。現在の経済の尺度からみたら、利益を犠牲にした環境対応は非合理的な選択となってしまいます。とはいえ「仕方がない」で終わらせないように、意思決定の場に若者の声を入れることは重要だと思っています。少し厳しい言い方をすると、上の世代は無意識に「自分たちは逃げ切れる」というマインドを持つ人が少なくないからです。

政府のSDGs実施指針改定にあわせて、民間企業や自治体、市民社会などがSDGsの実施状況や先進事例を共有し新指針にインプットするためのステークホルダーズ・ミーティングが開催されます。発言者の大半は中高年男性でしたが、2019年に参加した際、意外にも高校生や大学生の参加者がいることに気付きました。「この中に若者がいたら手を挙げてください」「こうした若者の視点も大事にしてください」と発言したら、思いがけず拍手喝采が起きて。その後、会議中に「若者」という言葉が増えたのが印象的でした。

この経験から、若者の存在が視界に入るだけでも意識が変わり、政策が未来志向へとシフトする可能性があると感じました。「子どもに格好悪い背中は見せられない」といった意識が刺激されるのかもしれません。自分にどこまでできるかはわかりませんが、長期的な視点に基づいた政策や経営が実行されるために、経済的合理性の定義から変えていく努力はしていきたいですね。近年では、経済成長の尺度に環境や社会の観点を盛り込む動きが広がっています。

──SDGs関連の仕事を目指す学生に向けて、メッセージをお願いします。

私が学生時代に特に苦労したのが、サステナビリティを重要視していない人に対して「なぜSDGsに取り組むべきなのか」と話して納得いただくことです。私が「やっておけばよかった」と思っているのが、サステナビリティがなぜ必要なのかを自分の言葉で語れるようになること。一口にSDGsと言っても、思い描く理想の社会は人それぞれ違うはずなので、SDGsがなぜ必要なのかをきちんと自分の言葉に落とし込んで、思いを込めて相手に伝えないと、人の共感は得られません。就職活動の面接で、自分の考えを伝える上でも大切なことだと思います。

また、私は社会人になってから経営学を学び、それまで疑問に思っていた組織の意思決定のメカニズムが腑に落ちました。サステナビリティの勉強も大事ですが、そこから幅を広げ、ファイナンスや財務の知識を通じて今の社会が動いている仕組みがわかると、より見識を深めることができると思います。

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

クックFRB理事の解任認めず、米控訴裁が地裁判断支

ワールド

スウェーデン防衛費、対GDP比2.8%に拡大へ 2

ワールド

WHO、成人の肥満治療にGLP-1減量薬を初めて推

ワールド

米長官、イランのウラン濃縮計画「完全解体を」 IA
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中