最新記事
アルツハイマー

アルツハイマー病の劇的な治療法が遂に判明!? カギを握るのは「血管」だった【最新研究】

Scientists Achieve ‘Striking Reversal of Alzheimer’s’ in Mice

2025年10月7日(火)18時15分
ハンナ・ミリントン

人間には適用できる?

また、他の実験では、生後12か月(人間では60歳に相当)のマウスにナノ粒子を投与し、6か月後の行動と記憶を分析した。

結果、生後18か月(人間では90歳に相当)になったそのマウスは、健康なマウスと同様の行動を示すまで回復したのだ。


チェンは、「アミロイドβのような毒性物質が蓄積すると病気は進行するが、血管機能が回復すると、毒性物質を除去し始める。これにより全体のシステムが再び均衡を取り戻すことができる。注目すべきはわれわれのナノ粒子は薬剤として作用し、毒性物質を正常に除去できるようにする機構が活性化するように見える点だ」と説明する。

研究チームによると、超分子薬剤は通常は「分子の門番」として機能するLRP1受容体の働きを模倣することで、アミロイドβに結合、血液脳関門を通過し、有害物質を除去できるようになる。結果、脳血管の老廃物除去機能が回復するのだ。

この研究結果は、アルツハイマー病治療に血管からアプローチできる可能性だけでなく、予後の改善という希望も示した。

ただし、人間への応用にはさらなる研究が必要だ。バッターリアは、今回の研究結果を人間へ適用することについて、次のように語った。

「人間の血液脳関門は、マウスのそれと同じ役割を担っている。もし人間であっても、安全にこの関門機能を回復できれば、栄養供給の安定化、炎症の軽減、有害タンパク質の除去といった、脳の環境維持機構が改善される。結果、アルツハイマー病の進行を遅らせるだけでなく、他の治療法の効果を高めることにつながるだろう」

Chen, J., Xiang, P., Duro-Castano, A., Cai, H., Guo, B., Liu, X., Yu, Y., Lui, S., Luo, K., Ke, B., Ruiz Perez, L., Gong, Q., Tian, X., & Battaglia, G. (2025). Rapid amyloid-β clearance and cognitive recovery through multivalent modulation of blood-brain barrier transport. Signal Transduction and Targeted Therapy.

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

WTO、26年貿易伸び率予想を0.5%に大幅下方修

ワールド

エベレストで猛吹雪、1人死亡 350人避難も200

ワールド

ロシア・トルコ首脳が電話会談、ウクライナ和平など協

ビジネス

米デル、長期収益の成長予測を上方修正 AIサーバー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示す新たなグレーゾーン戦略
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレクションを受け取った男性、大困惑も「驚きの価値」が?
  • 4
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 5
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 6
    「それって、死体?...」新婚旅行中の男性のビデオに…
  • 7
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 8
    監視カメラが捉えた隣人の「あり得ない行動」...子供…
  • 9
    プーチン側近のマッド・サイエンティストが「西側の…
  • 10
    筋肉が育つだけでは動けない...「爆発力」を支える「…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 9
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 10
    イエスとはいったい何者だったのか?...人類史を二分…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中