観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が「9頭のクマ」に食い荒らされた惨劇も
90年代に問題化した「観光ギツネ」
そもそも、知床国立公園では長年、野生動物への餌付け・餌やりが問題になってきた。
中でも問題視されてきたのが、知床に棲息する野生のキタキツネへの餌やりだ。
かつて歌謡曲「知床旅情」の影響もあり、1970年代以降、知床は急速に観光地として整備されていく。1969年には知床林道が開通し、以降は観光バスの往来もはじまる。
この頃はわざわざバスを停めて、野生のキツネに餌をやる機会を作っていたという。
1980年に知床横断道路が開通すると、観光客の数は倍増。以降は増加の一途をたどり、1990年代には約150万人もの観光客が訪れるようになる。
90年代には「観光ギツネ」が問題となった。観光バスがやってくると、キツネが道路上に現れ、餌をねだるそぶりを見せるようになった。通常のキツネと振る舞いがあまりにも異なるため、あえて「観光ギツネ」と呼んでいたわけだ。
ちなみに、キツネへの餌やりは、キツネの生態に悪影響を及ぼすだけでなく、人間の安全面でも問題だ。野生のキツネはエキノコックスという寄生虫を持っていることがあり、接触すると感染する場合がある。エキノコックスは肝臓に寄生し、数年の潜伏期間を経て増殖し、深刻な肝機能障害を引き起こすとされ、最悪の場合は死に至る。
違反者には30万円の罰金
ヒグマはキツネと違って気軽に接近できるわけではないが、知床が観光地化するにつれて、やはり餌付け・餌やり行為が問題となってきた。観光客が車の中から餌を投げたり、不法投棄したごみをヒグマが食べるケースが多数目撃されている。
知床財団のサイトでは、観光客がソーセージを与えたせいで、人間を怖がらなくなり、市街地に出没するようになったヒグマを射殺したエピソードを紹介している。1997年の出来事だという。
2000年代以降は、知床国立公園において、野生動物への餌やり禁止の啓発活動が行われ、観光客向けのカンバンなどの設置も進んだ。
2022年には自然公園法が改正され、国立公園・国定公園など特定地域等において、野生動物への餌やりや接近行為が禁止され、違反者には30万円の罰金が課されることになった。
こうした取り組みで餌やり行為は減少したとされるが、近年のインバウンドブームによって、外国人観光客が急増したことで、餌付け・餌やり行為が復活してきているという指摘がある。





