最新記事
クマ

観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が「9頭のクマ」に食い荒らされた惨劇も

2025年9月9日(火)11時31分
中野タツヤ(ライター、作家)*PRESIDENT Onlineからの転載

「クマをペットにした女性」の最期

しかし、クマが何らかの理由で肉食を覚え、凶暴化し、人間を襲撃することもある。

山中で自然に死んだシカの死体を食べ肉食化することもあるが、「人間による餌付け」もまた、クマを肉食化させるきっかけになりうる。


また、餌付けによってクマが人間を恐れなくなることも、襲撃のリスクを高める。これまで人間を恐れて近寄らなかったクマが、急に攻撃的になる可能性もあるからだ。

実際、アメリカ・コロラド州南西部のユーレイでは、クマに餌付けをしていた女性が殺される事件が2009年に発生している。AP通信によると、この女性は74歳で、少なくとも10年間にわたり、付近に棲息するクマ(アメリカクロクマ)に餌付けする目的で、家の外に食べ物を置いていた。

「彼女はクマを家族のように扱い、まるでペットのように餌を与えていました」という証言もある。女性の家のまわりには最大で9頭のクマが集まっていたという。

だが、餌付けにより凶暴化したクマは、ある日突然、女性に襲いかかった。女性の自宅はフェンスに囲まれていたが、クマはフェンスごしに女性を襲い、遺体の一部を食害していた。

6歳の男の子は「ほとんど食べられてしまった」

また、直接餌付けをしていなくても、クマが人間の食べ物を入手し、肉食化するケースがある。

特に、ごみを長期間屋外に放置していたり、不法投棄していた場合、クマがそれを食べて肉食化・凶暴化することがあるという。

アメリカ・アラスカ州の小さな漁村キングコーブでは、街のごみ捨て場を漁っていたクマが凶暴化し、6歳の少年が殺害される事件が発生している。

AP通信によると、事件が発生したのは1992年7月12日。

母親と妹と3人で歩いて帰宅する途中だった6歳の少年が、突然藪の中に引きずりこまれて、クマに食べられた。惨たらしいことに、その遺体はほとんど残っていなかったという。

事件の加害クマは、町のごみ捨て場を漁り、凶暴化したと見られている。

このように「クマの餌付け」は、クマを凶暴化させ、獣害を生む元凶として固く禁止されているのだ。

羅臼の事件の加害クマも、餌付けによって肉食を覚え、凶暴化したのだろうか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=3指数下落、AIバブル懸念でハイテク

ビジネス

FRB「雇用と物価の板挟み」、今週の利下げ支持=S

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀

ワールド

EU、ロシア中銀資産の無期限凍結で合意 ウクライナ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中