最新記事
健康

コーヒー豆から「新成分」が発見される...糖尿病・がん・肥満を予防する可能性も【最新研究】

Coffee May Hide Secret to Diabetes Management

2025年8月31日(日)10時25分
ハンナ・ミリントン

「これまでの大規模調査では、コーヒーの常飲によって、2型糖尿病の発症リスクの低下や、糖尿病患者の生存率向上と関連していることが報告されています。ですから、カフェイン以外の成分にも有益な作用がある可能性があります」

今回、新たに発見された3種類のジテルペン化合物は「カフアルデヒドA、B、C(caffaldehydes A-C)」と名付けられ、標準薬である「アカルボース」よりも高い阻害活性を示した(アカルボースは、食事や薬剤の見直しでも血糖値が改善しない2型糖尿病患者に用いられ、食後の急激な血糖上昇を抑える働きを持つ)。


既存の化合物とは異なる脂肪酸を含むことから、その新規性が確認されたこの成果は、焙煎コーヒーのような複雑な食品構造の中から、構造的に多様で生理活性を持つ化合物を見つけ出す方法として有効であることを示している。

今後は、コーヒー由来の新たな機能性食品成分や栄養補助食品として、血糖コントロールへの応用が期待される。

ただし、本研究で特定された新成分が現時点では、ヒトにおける効果が証明されていないことをスヴァンフェルト氏は強調する。

また、コーヒーを飲むこと自体は健康的な生活習慣の一部として問題はなく、既存の治療の「補助的な選択肢」になり得るとしつつも、コーヒーに含まれる成分が血糖測定機器や薬、生活習慣の改善に代わるものではなく、糖尿病の治療法と見なすべきではないとも釘を刺す。

研究チームは、今回の手法をその他の構造的に複雑な食品にも応用し、迅速な生理活性成分のスクリーニング技術として発展させる可能性を示唆している。

そして新たに特定された生物活性を明らかにし、安全性や有効性を動物実験などで検証する予定だ。

なお、カフェインの許容量には個人差がある。一般的に、1日あたり400mg(コーヒー3〜4杯分)までは成人にとって安全とされるが、不安感や不眠、消化不良などの副作用が少量でも生じる人もいる。

【参考文献】
Hu, G., Quan, C., Al-Romaima, A., Dai, H., Qiu, M., Hu, G., Quan, C., Al-Romaima, A., Dai, H., & Qiu, M. (2024). Bioactive oriented discovery of diterpenoids in Coffea arabica basing on 1D NMR and LC-MS/MS molecular network. Beverage Plant Research, 5(1).

ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英財務相、11月26日に年次予算発表 財政を「厳し

ワールド

金総書記、韓国国会議長と握手 中国の抗日戦勝記念式

ワールド

イスラエル軍、ガザ市で作戦継続 人口密集地に兵力投

ビジネス

トルコ8月CPI、前年比+32.95%に鈍化 予想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中