「太ってもいい」は嘘だった?...「ボディ・ポジティブ」の旗手たちも糖尿病薬で「お手軽ダイエット」の功罪

The Beautiful And The Damned

2025年6月5日(木)16時35分
ヘスス・メサ(本誌英語版エディター)

newsweekjp20250605055327.jpg

対策の基本はあくまでも運動? ANTONIO_DIAZ/GETTY IMAGES

それに、GLP-1薬は食欲を抑える効果はあるものの、より根本的な問題は変えられないと、クリッツマンは指摘する。

「処方箋を発行するだけでは肥満は解決できない。それなのにこれらの薬が肥満の特効薬と見なされて、栄養教育や健康的な食品へのアクセス改善、あるいは運動の重要性を教えるといった肥満予防策がおざなりになる恐れがある」

とはいえ、減量薬のブームは、「痩せ信仰」という現代の文化と切り離すことができない。「痩せていることは良いことだと見なす文化が根強く存在する」と、ボディーポジティブを推進するポッドキャストを主宰するジャーナリストのバージニア・ソールスミスは言う。


ありのままの体形や容姿を肯定するボディーポジティブ運動に救いを見いだしている人たちにとって、「痩せているのは良いこと」という古くさい理想が新しい形で復権したことは、後退のように感じられる。

ボディーポジティブ運動の起源は、1960年代のファット・アクセプタンス運動(肥満受容運動)にさかのぼる。当初は医療へのアクセス改善や肥満者に対する差別反対、そしてテレビや映画のメインキャストに太った人を起用するなど、肥満者もリスペクトするよう社会の見直しを求める運動だった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザ「国際安定化部隊」、各国の作業なお進行中=トル

ビジネス

米ウェイモ、来年自動運転タクシーをラスベガスなど3

ビジネス

欧州の銀行、米ドル資金に対する依存度高まる=EBA

ワールド

トランプ氏、NY市長選でクオモ氏支持訴え マムダニ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中