「太ってもいい」は嘘だった?...「ボディ・ポジティブ」の旗手たちも糖尿病薬で「お手軽ダイエット」の功罪
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それに、GLP-1薬は食欲を抑える効果はあるものの、より根本的な問題は変えられないと、クリッツマンは指摘する。
「処方箋を発行するだけでは肥満は解決できない。それなのにこれらの薬が肥満の特効薬と見なされて、栄養教育や健康的な食品へのアクセス改善、あるいは運動の重要性を教えるといった肥満予防策がおざなりになる恐れがある」
とはいえ、減量薬のブームは、「痩せ信仰」という現代の文化と切り離すことができない。「痩せていることは良いことだと見なす文化が根強く存在する」と、ボディーポジティブを推進するポッドキャストを主宰するジャーナリストのバージニア・ソールスミスは言う。
ありのままの体形や容姿を肯定するボディーポジティブ運動に救いを見いだしている人たちにとって、「痩せているのは良いこと」という古くさい理想が新しい形で復権したことは、後退のように感じられる。
ボディーポジティブ運動の起源は、1960年代のファット・アクセプタンス運動(肥満受容運動)にさかのぼる。当初は医療へのアクセス改善や肥満者に対する差別反対、そしてテレビや映画のメインキャストに太った人を起用するなど、肥満者もリスペクトするよう社会の見直しを求める運動だった。