「太ってもいい」は嘘だった?...「ボディ・ポジティブ」の旗手たちも糖尿病薬で「お手軽ダイエット」の功罪
The Beautiful And The Damned
そこに大きな変化をもたらしたのは、スキンケアブランド「ダブ」が2004年に開始した「リアル・ビューティー」キャンペーンだ。
企業マーケティングによって、社会の深い部分にある格差は置き去りにして、「(太っている)自分を愛そう」という、より口当たりのよいスローガンがちまたにあふれるようになった。
いわばボディーポジティブの「リブランディング」によって、「企業は現実的な変化を起こさなくても、インクルージョン(包摂性)の擁護者のフリをできるようになった」と、ライターのアマンダ・マルは18年にオンラインメディアVOXに寄稿した記事で主張している。
だが、生命倫理の専門家であるクリッツマンがあくまで強調するのは、個人の選択や、いわゆる「奇跡の薬」だけでは、肥満という病気は解決できないという事実だ。
「包括的で体系的なアプローチが必要だ」と彼は言う。「医者も患者も政策立案者も、保険会社も、食品会社も一緒に、肥満を助長する環境を変える必要がある。個人で解決できる問題ではない」