健康寿命を延ばすには「つながり」が不可欠だった...最新研究が示す『つながる技術』とは?

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<死ぬ可能性が2倍から3倍も高くなっていた...。健康的な人間関係は、医療や生活習慣以上に長寿を左右。気鋭の研究者による研究最前線より>
最新の幸福研究と科学が明らかにした「長寿・健康・幸せ」と「人間関係の質」の驚くべき関係とは?
ハーバード、スタンフォード、グーグルなどで研究する気鋭の研究者が最新の成果・データで解説した話題書『つながる技術 人生を豊かにしてくれる大切なこと』(日経BP/日本経済新聞出版)の第1章「『健康』の意味を 再定義する」より一部編集・抜粋。
つながりの健康が寿命を延ばす
1979年、2人の疫学者が発表した1本の論文が、人間関係と寿命の関係についての学術界の理解と関心に劇的な変化をもたらしました(*1)。
当時イエール大学の研究者だったリサ・バークマンとカリフォルニア大学バークレー校の研究者だったレオナード・サイムは、9年間にわたり7000人近い成人の追跡調査を行いました。
すると、調査開始時にどれほどからだが健康でも、社会経済的ステータスが高くても、喫煙、飲酒、運動といった習慣や予防医療サービスの利用の有無にかかわらず、人間関係やコミュニティとのつながりが乏しい男性は早く死亡する可能性が2倍も高かったのです。
孤立した女性の死亡リスクは、人とのつながりがある女性の3倍でした。驚くべき結果でした。人との絆やつながりが欠けていると、他の健康習慣とは関わりなく、来る10年の間に死ぬ可能性が2倍から3倍も高くなることを意味していました。
この事実は、以来数十年の間にさらに数多くの研究によって検証されました。こうした研究成果をすべてまとめて検討したのが、世界中で15億人近い被験者を対象とした1100本以上の研究論文を総括し、2021年に『フロンティアーズ・イン・サイコロジー』に発表された論文です(*2)。
非常に一貫した結果でした。つながりの健康が衰えている人──家族の絆の強さ、社会的接触の頻度、配偶者の有無といった因子で評価します──は、どの死因についても死ぬ可能性が11%から53%の差で高かったのです。