最新記事
性犯罪

「だれにも言っちゃだめだよ」になぜ子どもは従ってしまうのか...集団の性被害を防ぐために気を付けたいこと

2025年3月26日(水)17時38分
櫻井 鼓 (犯罪心理学者、横浜思春期問題研究所副所長)*PRESIDENT Onlineからの転載
「だれにも言っちゃだめだよ」になぜ子どもは従ってしまうのか...合宿、キャンプなど集団の性被害を防ぐために気を付けたいこと

Sirisak_baokaew-shutterstock-

<「子どもが複数でも安全とは限らない」 合宿、キャンプ、遠征先、、、子ども複数に大人1人の状況は避けたほうがいい>

性被害に遭った子どもが、被害をなかなか周りに相談できないのはなぜなのか。

犯罪心理学者で、性暴力被害者のケアや心理分析などに携わってきた櫻井鼓さんは「加害者が知り合いだったり社会的立場が上の人だったりすると、被害者が相手を非難することは難しくなり、『自分が悪いのではないか』と思ってしまうことがある」という──。

※本稿は、櫻井鼓『「だれにも言っちゃだめだよ」に従ってしまう子どもたち』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。


「部屋、使っていいよ」


子ども:ウチの親、仲悪いんだ

加害者:そうなんだ。家にいるのがいやなの?

子ども:うん。あんまり家にいたくない

加害者:だったら仕事に行ってる間はおれの部屋、使っていいよ

ほかの大人の目に触れない状況を作る

前のシーン(第2回)では、周囲との切り離しの中でも、関係性からの切り離しについてお伝えしました。ここでは、物理的な状況からの切り離しの手口について説明していきたいと思います。

ちなみに、感覚をしゃ断されるような環境(かんきょう)に置かれると、人の思考の働きはにぶくなると言われています。物理的に切り離されて特殊な環境に置かれれば、いつもと同じような判断ができなくなる可能性はあるでしょう。

加害者は、性的行為に導くことができるように、周りから見られないような物理的状況をつくり出します。これは、対象と2人きりになれる状況ということですが、それだけではありません。加害者1人と、子どもが複数いる状況というのもふくまれます。つまり、ほかの大人の目に触れないということです。

「2人きり」になれる状況に注意する

このように書くと、どこかにさらっていくのではないかと思われるかもしれません。でも、そうではなく、日常の一場面のように見せかけられてしまうところに、なかなか気づきにくい難しさがあります。

これから挙げるいくつかの場面が、必ずしも悪いとは言えませんし、確実に性的グルーミングにつながるというわけでもありませんが、注意をはらいたい、という観点でお伝えしたいと思います。

たとえば、個室トイレ、空き教室や会議室、ちょっとした死角などのような、身近なところで2人きりにされる場合です。

こういう場所で、おもちゃやゲームといった遊びとか、「(状況的に違和〔いわ〕感のない)○○を見てほしい」などと言葉たくみに誘われるといったことがあります。仕事や教育活動で必要とされている時間帯以外は、不用意に家族以外の大人と2人きりにならないほうがいいのかもしれません。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

新潟県知事、柏崎刈羽原発の再稼働を条件付きで容認 

ビジネス

独総合PMI、11月速報値は52.1 2カ月ぶり低

ワールド

EU、域内貿易でトランプ関税に対応可能=ラガルドE

ワールド

化石燃料からの移行、COP30合意文書から削除 国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 5
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 9
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中