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スイスで「駅弁」が完売! 欧州で日常になった日本食、770円「似て非なる」おにぎりも

2025年3月10日(月)10時40分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

スイスでは日本の弁当といえば、冷めてもおいしい携行食としての弁当ではなく、和食レストランで食べる"定食としての"唐揚げ弁当や鮭フライ弁当等を思い浮かべる人が多い。和食レストランがじわじわ増えているチューリヒで、珍しい日本の"駅弁"に興味をもつ人がたくさんいても不思議はない。


 

日本の食材も、現地スーパーで好評

チューリヒでは、各種アジア料理(中華、韓国、タイ、ベトナム、インド等)のレストランは好評だ。最近はポケ丼(ハワイ発祥だが、生魚とご飯の組み合わせはアジア的)、そしてチベットのモモ(蒸し餃子)もよく見かけるが、日本食人気は飛び抜けている。

スイスのスーパーでは持ち帰り用の寿司の詰め合わせや、パック入りの茹でた枝豆等が売られている。アジア食材のコーナーには寿司関連食品はもちろん、パン粉やうどん麺、しらたきも並び、需要の高さがうかがえる。冷蔵エリアには野菜やエビ風味の餃子もある。一時は、日本から輸入したパック入りの味噌も販売していた。デパートの食品売り場でも日本食材の品揃えは豊富だ。

日本食材店も以前はスイス在住のアジア人が多かったが、今ではいつ行っても何人ものヨーロッパ人が買い物している。

スイスの大手スーパーの日本食コーナー

Sushi Mania in der Migros Eatery ©Migros-Genossenschafts-Bund
スイスの大手スーパーでは、寿司の詰め合わせやポケ丼(生のマグロやサーモン+ご飯)が毎日販売されている

パリでは10年以上前から弁当人気

ヨーロッパを隅々まで調査したわけではないが、日本の食文化が欧州で一般化しつつあるのは明らかだ。寿司やラーメンは定着している。英スナク前首相が2023年のG7広島サミットで焼いて話題になったお好み焼きも、英仏独では専門店があり食べられる。

携行食としての弁当は、長らく日本文化全般に高い関心を寄せてきたフランスでは、ヘルシー志向にも後押しされ、10年以上前から人気を博していた。パリの弁当屋で弁当をテイクアウトする(店内で食べることも可能)フランス人の姿を伝えるため、筆者は2015年にパリの弁当屋を取材し、某雑誌に寄稿した。

パリの弁当屋「ムスビ」のお弁当

パリの弁当屋「ムスビ」のお弁当(筆者撮影)

その時は4店を巡った。日本人街にある老舗の「十字や」は当時開業20年以上で、多くのフランス人が利用していたし、2013年に日本人女性がビジネス街に開店した「ムスビ」は周辺で働く人たちが常連客で、デリバリー専門の「Misato」は現地企業での会議時の注文が絶えなかった(Misatoは、その後、路面店をオープンした)。また、現在は閉店したが、クリエイティブ職の住人が多い界隈にあった弁当屋では、日本好きのフランス人たちが和の調味料で作った弁当をたくさんのフランス人(客の7割)が買っていた。

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