最新記事
ヘルス

血糖値が急上昇する食事が「血管と全身の老化」をもたらす 炭水化物大好き人間を待つ「恐怖の結末」

2023年9月22日(金)14時25分
池谷敏郎(池谷医院院長、医学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載
ジャムを塗ったパンと果物、オレンジジュースなど

新鮮な果物やジュースなど一見健康的に見えるものでも血糖値を急上昇させることも Elena Veselova - shutterstock


糖質を制限しようとする人は多いが、問題は「摂り方」。血糖値の急上昇こそ、体内に活性酸素を発生させて身体に悪さをする。生活習慣病、血管、心臓などのエキスパートである医師・池谷敏郎さんは「いまや、心不全の患者数はがんのそれを超えているという推計もあります。血管にダメージを与えないような生活習慣、食生活を意識してほしい」という――。

※本稿は、池谷敏郎『完全版 最速で内臓脂肪を落とし、血管年齢が20歳若返る生き方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

血管の老化が引き起こすさまざまなトラブル

血管の老化が引き起こすトラブルにはさまざまあります。

血管は加齢とともに老化しますが、それによって、動脈の血管壁が硬く厚くなって、弾力性を失った状態――これが「動脈硬化」です。

動脈硬化は、加齢に伴う生理的な要因のほか、血液中に「悪玉」といわれるLDLコレステロールや中性脂肪が増えすぎたり、「善玉」といわれるHDLコレステロールが減少することで起こる脂質異常や、高血圧、高血糖、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなど、さまざまな危険因子が重なることで、徐々に進行が始まります。

酸化ストレス(体内で活性酸素が過剰に産生され、それを消去する抗酸化防御機能とのバランスが崩れて酸化に傾いた状態)や、高血圧に伴う圧力などによって、血管壁の内壁を覆おおう血管内皮細胞が傷つきます。

血管内皮細胞は、血液と血管壁の間を隔(へだ)てるバリアの役割をしているため、そのダメージによって血中のLDLコレステロールなどが血管壁内へと侵入します。

管事故を引き起こす「天敵」

このLDLコレステロールが酸化されると異物(酸化LDL)となり、免疫細胞であるマクロファージに取り込まれて血管壁に蓄積されます。このようにして血管壁に柔らかい脂質を含んだ瘤(こぶ=プラーク)が生じ、粥状(じゅくじょう)動脈硬化が始まります。

プラークは血圧上昇などの刺激によって傷つきやすく、傷ついた部分には血栓(血の塊(かたまり))ができます。そして、血栓は、瞬(またた)く間に大きくなって血管内腔を詰まらせたり、一部がちぎれて流され、より末梢(まっしょう)の血管を閉塞してしまうことがあります。

厳密には「動脈硬化」にもいくつかの種類がありますが、心臓や脳などの太い動脈で起りやすく、血管事故につながるのが、この「粥状動脈硬化(アテローム性動脈硬化)」で、一般に動脈硬化という場合は、この病態を指していることがほとんどです。

動脈硬化が進行する「全身の老化現象」

動脈硬化が進むことで、次のような全身の老化につながります。


・血行が悪くなり、肌や髪がボロボロになる
・代謝が悪くなって太りやすくなる
・肩凝り、腰痛、むくみ、冷えなどの症状が現れる
・疲れやすくなり、姿勢が悪くなる
・病気がちになる
・脳に栄養や酸素が十分に送られず、脳の機能が低下する

話はこれだけでは終わりません。

厚生労働省の「人口動態統計」によると、2021年の日本人の死因の第1位は「悪性新生物(がん)」、第2位は「心疾患(高血圧症を除く)」ですが、心疾患による死亡率は年々増加しています。

ビジネス
暮らしの安全・安心は、事件になる前に守る時代へ。...JCBと連携し、新たな防犯インフラを築く「ヴァンガードスミス」の挑戦。
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

訂正マネタリーベース、国債買入減額で18年ぶり減少

ビジネス

テスラ、10月の英販売台数が前年比半減 欧州諸国で

ワールド

ジャマイカ、最強ハリケーン被害は現時点で60億-7

ビジネス

イーライリリーとノボ、薬価引き下げと保険適用拡大で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中