最新記事
ヘルス

処方薬で治らなかったうつ病 7年苦しんだ精神科医を救ったシンプルな方法とは?

2023年8月25日(金)18時25分
宮島賢也(精神科医・産業医) *PRESIDENT Onlineからの転載
うつで食が進まない男性

*写真はイメージです Hananeko_Studio / shutterstock


メンタルの不調を改善するにはどうすればいいのか。7年間うつ病に苦しんだ精神科医の宮島賢也さんは「患者さんと同じように処方薬を飲み続けたが、うつは治らなかった。うつのトンネルに光が見えたのは、食生活の改善がきっかけだった」という――。

※本稿は、宮島賢也『メンタルは食事が9割』(アスコム)の一部を再編集したものです。

薬では患者のうつも、自分のうつも治らなかった

精神科医である僕も、長くうつで苦しんだひとりです。

うつ病と診断されたのは、2000年のことです。それから7年間、処方薬を飲み続けましたが、うつ状態はよくなりませんでした。その間、精神科医としてうつの患者さんに同じように薬を処方しましたが、やはり、ほとんどの患者さんを治すことができませんでした。

自分がうつになり、薬を飲み、また多くの患者さんに薬を処方する中でわかったことがあります。それは、「うつは薬では治らない」ということです。

薬を飲めば不安や落ち込みが麻痺しやすくなりますが、対症療法ですから、寛解しても多くは再発します。私の場合は薬を飲むことで不安が麻痺することもありましたが、家族と一緒にいるときの幸せも感じにくくなった気がします。

さらに、その場の気持ちを抑えてくれても、原因は解決できていないので一向に治りません。それが私の7年間でした。

原因を取り除かなければ、完治できるはずがない

大きな原因といわれるのがストレスです。

ところが、世の中には、同じストレスがかかっても、うつになる人とならない人がいます。物事をどうとらえるか、自分をどう見つめるか、そうした心のあり方によって、うつになるかどうかが決まるというわけです。「もう自分はダメだ、未来がない」と思えば、心身の状態はうつへと向かいます。

僕の場合はどうだったかというと、医師としての自分に自信が持てないから診察するときはいつもびくびく、将来に向けては不安だらけ。そんな心の状態がうつへの引き金になりました。

それなら、物事をネガティブにとらえがちな心を変えればいいじゃないか、ということになりますが、それがとても難しいのです。

うつになりやすい人は、完璧主義だとか、断れない性格だとか、まじめなタイプだとか、人の目が気になるタイプだとかいわれますが、何年もかけてつくってきた「自分」を変えるのは簡単ではありません。それは、僕も身に染みてよくわかります。

といって、ストレスそのものを排除できるかというと、それも難しいものです。人間関係のストレスには相手がいるので自分だけで解決できませんし、リストラや身近に起きる不幸などは、自分ではどうすることもできません。結局、その場の気持ちを抑えてくれる薬を頼りますが、原因を解決できていないので一向に治りません。それが僕の7年間でもありました。

そんな僕でしたが、うつからすっかり抜け出すことができました。性格は変わりませんし、仕事も、生活環境も、人間関係も、まったく同じでしたが、変えたものが1つだけありました。食事です。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米特使がガザ訪問、援助活動を視察 「食料届ける計画

ビジネス

ドル・米株大幅安、雇用統計が予想下回る

ビジネス

米労働市場おおむね均衡、FRB金利据え置き決定に自

ビジネス

米7月雇用7.3万人増、予想以上に伸び鈍化 過去2
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中