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放っておくと「40歳から縮んでいく脳」の老化を防ぐ 週1食べるだけで効果が出る注目の食材とは

2023年5月18日(木)17時45分
マックス・ルガヴェア(健康・科学専門ジャーナリスト)、ポール・グレワル(内科医) *PRESIDENT Onlineからの転載

時計の針を巻き戻す運動の効果

2011年に発表された独創的な研究では、被験者は認知機能の正常な120人の成人で、その半数が1年にわたって週に3回、有酸素運動を行った。そしてMRIで脳を調べたところ、研究を開始したときより海馬が2パーセント大きくなっていた。

なあんだ、それだけか、とあなたが笑う前にお知らせしよう。海馬は通常、40歳を過ぎる頃から年におよそ1~2パーセントずつ小さくなっていく。そして実際に、対照群の被験者たちにこれが起きていた。彼らの脳をスキャンした結果、脳の体積が同じ割合で減っていたのだ。この研究チームの論文によると、有酸素運動によって記憶形成の中枢である海馬の時計の針が、実質的に1〜2年戻っていたという。現時点で、この世に、これほどの力を発揮する薬はほかにない。

ここまで言っても、まだあなたが驚かないなら、こんな話はどうだろうか。海馬が大きくなっていた被験者たちは、慣れ親しんだ空間を移動するときの記憶力、つまり空間記憶も改善していた。

精神的なストレスに強くなる

books20230502.pngとはいえ海馬を強化すると、単に老化に逆らえるだけではない。海馬はアルツハイマー病になると最初に攻撃される脳の部位の1つだが、慢性的なストレスからもダメージを受けやすい。

コルチゾール値が常に高い状態が続くと、体内の「闘争か逃走か」メカニズムが過度に刺激されて、海馬が損傷してしまう。海馬は、何か出来事が起きたときに、脳に落ち着いて(あるいは即座に)反応するように指示する。そのため海馬が損傷すると、厄介なフィードバック・ループが生じる。

というのも、どう反応すべきかは怖れと情動をつかさどる脳の部位が、海馬と「相談」して決めるからだ。そして研究が示すとおり、運動をすると、海馬が強化され、その結果、脳が鍛えられて精神的なストレスに強くなる。

●お勧めの有酸素運動●
低い負荷で、ゆっくりと!
▼ハイキング
▼サイクリング
▼歩幅を大きくとり、早足で歩く
▼軽いヨガ

マックス・ルガヴェア(Max Lugavere)

健康・科学専門ジャーナリスト
映画製作者。「メドスケープ」「ヴァイス」「ファスト・カンパニー」「デイリー・ビースト」などのメディアに寄稿し、「NBCナイトリーニュース」や「ドクター・オズ・ショー」「ザ・ドクターズ」などのテレビ番組に出演、「ウォールストリートジャーナル」紙で紹介されるなど幅広く活動している。講演者としても人気を博し、ニューヨーク科学アカデミーや、ワイルコーネル医療センターなど権威ある学術機関に講師として招かれた。また、スウェーデンのストックホルムで開催されたバイオハッカーサミットでも講演を行った。2005年から2011年まで、アル・ゴアの「カレントTV」のジャーナリストを務める。主にニューヨークとロサンゼルスを拠点に活動を続けている。

ポール・グレワル(Paul Grewal)

内科医
食生活とライフスタイルという視点から減量や代謝機能、不老長寿のための医療を実践し、講演も行っている内科医。彼自身45キロ近い減量に成功し、その体重を維持している。大きな誇りと情熱を持ちながら、患者が健康に生きるために楽しく続けられる、万人に適用できる療法を探る。ジョンズ・ホプキンズ大学で細胞・分子神経科学の学士号を取得。ラトガース大学メディカル・スクールで医学を学び、ノース・ショア・ロング・アイランド・ジューイッシュ・ホスピタルで研修課程を修了。MyMDメディカルグループを創設し、ニューヨークシティで開業、金融会社や健康管理会社のメディカルアドバイザーを務めている。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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