最新記事

ライフスタイル

あなたを大地に還すエコな埋葬 ドイツ企業、遺体堆肥化サービスを開始

2023年3月3日(金)11時15分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

ツェルクラム・ヴィテ社は、パブロ・メッツ氏とマックス・ヒューシュ氏の2人が立ち上げた。2人は、埋葬法について親族たちを中心に聞いてみたところ、主流の土葬も火葬も本当によいものには思えないという意見が多かった。そこで、環境に優しく、サステナブルで、美しい葬儀を望む人たちに第3の選択肢を提供しようと思い立った。起業してみたら、非常に多くの人が堆肥葬を希望していると改めてわかったという。

「堆肥葬」
 
堆肥化した遺体を埋葬した様子 ©MEINE ERDE


2023年は、2番目の堆肥化施設がオープンの見込み

マイネ・エアデは、地元ドイツはもとより、オーストリアやスイスのマスコミにも取り上げられ、ドイツ語圏で注目されている。マイネ・エアデには、「堆肥に病原体が残るのではないか」といった医師たちなどからの批判もある。それらの批判について、同社は以下のように話している。

「ドイツでは約150年前に、火葬が新しい方法として導入されました。堆肥葬の導入は150年ぶりの葬儀の大変革で、多くの疑問が抱かれることは承知しています。これまで5人の方々の葬儀を終えただけですが、基本的な疑問は解決されていて、法医学者や関係官庁でさえも疑う点はないはずなのです。所轄官庁は、マイネ・エアデに関する情報をもっています。わが社は、これから実績を積み重ねていきます。マイネ・エアデは人間にとっても環境にとっても、確実で安全な方法です。ある研究所が堆肥化した遺体の土壌を分析して、それは証明されています。また、現在ライプチヒ大学病院法医学研究所でマイネ・エアデの調査を行っていて、結果は査読付き論文として発表される予定です」(プレス担当)

ツェルクラム・ヴィテ社はサービスの拡大を目指している。2番目のアルヴァリウム開設のために、シュレスウィヒ・ホルシュタイン州で場所を探し、他州でも開設しようと準備を着々と進めている。同社は、ドイツで人生の終い方に新たな1ページを作ったといえるかもしれない。


s-iwasawa01.jpg[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中