最新記事

メンタルヘルス

「考えすぎ」で寿命が短くなるという研究──「べき思考」を治すテクニックとは?

2022年9月1日(木)08時57分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
思考

Andreus-iStock

<「考えすぎ(overthinking)」は「思考ウイルス」による、認知システムのバグ。自尊心を傷つける思考パターンを手放すには、言葉の使い方を変えるだけ>

思考は人間が動物と区別される能力の1つである。しかし、近年、「考えすぎ(overthinking)」の有害性に関する研究が相次いで発表されている。

ハーバード大学医学部ポール・F・グレン老化生物学研究センターのブルース・ヤンクナー教授らのグループは、過剰な脳活動が寿命を縮める可能性に関する研究結果を発表している。

60~70歳代と100歳以上の高齢者の脳を比較したところ、比較的若い年齢で亡くなった人は、脳の活動を沈静化させるタンパク質「REST」が大幅に少ないことが判明。脳の活動の過度な活性化、つまり「考えすぎ」によってRESTが枯渇し、それが寿命の短縮につながっているという。

また、「考えすぎ」によって、神経伝達物質であるグルタミン酸が前頭前皮質に過剰に蓄積された結果、集中力の喪失、計画力や記憶力の低下を引き起こす可能性について、パリのピティエ=サルペトリエール病院の研究チームが「Current Biology」誌に先月発表した。

「考えすぎ」は習慣

では、「考えすぎ」をやめるにはどうしたらいいのか?

不安障害の第一人者である、グウェンドリン・スミス博士は、考えすぎは「思考ウイルス」、つまり思考の癖、習慣による認知システムのバグだと言う(『考えすぎてしまうあなたへ』より)。

ゼロが100かというように、ものごとの有無をはっきりつけて曖昧さを受け入れない「白黒思考」、「たいしたことじゃない」「運が良かっただけ」などと、ネガティブな面ばかりに焦点を当てる「マイナス化思考」など、「思考ウイルス」は考え方を強化してしまう。


「思考ウイルス」の一覧
白黒思考/過度の一般化/ネガティブフィルター/マイナス化思考/結論の飛躍/拡大解釈/過小視/感情的推論/認知的推論/身体的推論/自己関連づけ/「もう耐えられない!」/レッテル貼り/べき思考

中でも、「べき思考」を手放すことの重要性を博士は強調する。

自分の言動を振り返ることは大切なプロセスであるものの、「こうすべきだった」「やらねばならない」など、「べき」という言葉は自分を支配し、罪悪感を与える。そして自尊心を傷つけるだけでなく、自己不信に陥り、不安を引き起こしてしまう、思考パターンだという。

127beki-20220831-2.jpg

『考えすぎてしまうあなたへ』127頁より

では、どうしたら「べき思考」をやめることができるのか? 博士は「べき」の代わりに「選択」を強調するような言葉を使うように勧めている。言葉遣いによって思考を変化させることができるのだ、と。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ和平案の感謝祭前の合意に圧力 欧州は

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中