最新記事

ヘルス

太陽の光を浴びて癌治療する日が来る? 最新研究が明かす免疫の謎

Cracking Immunity's Riddles

2019年1月11日(金)13時05分
スタブ・ジブ

リゾートのビーチでくつろぎながら癌治療できる日が来る?  VLADGANS/ISTOCKPHOTO

<「免疫の司令塔」として注目される腸を舞台に乳酸菌が免疫力を上げる仕組みが明らかに。腸内環境と免疫系のコラボが医学の常識を変える?>

ジョージタウン大学医療センターの研究者らによれば、日光に含まれる紫外線と青色光が免疫システムの要であるT細胞を活発化させる。つまり、日光は免疫力を高めるということだ。「日光は人間の健康や自己免疫、癌にまで関係する」と、研究の上席著者である同センターのジェラルド・アハーン准教授(薬理学・生理学)は言う。日光を浴びると肌でビタミンDが生成されることは知られているが、それとはまた別の有益な効果が日光にありそうなことを、アハーンと同僚たちは確認した。

研究では、人間の血液とマウスの血液からT細胞を分離させ、研究室で培養。T細胞に紫外線または青色光を当てると細胞が活性化され、動きがより速くなった。さらなる検査で、この効果を得るには日光を5~分浴びることが必要だと判明した。別の実験では、日光が過酸化水素の生成を促し、これがT細胞の動きを速めることが示された。

紫外線も青色光も細胞を活発化させるが、研究者は青色光のほうに注目した。紫外線は癌を引き起こすことが知られており、さらに肌の表皮にしか届かないからだ。肌のT細胞のほとんどが第2層である真皮にあり、青色光ならそこまで届く。となると、青色光のランプを利用して免疫力を上げ、肌の病気や癌さえも治療できるようになる可能性もある。

「私が知る限り、このタイプの免疫細胞に対する(光の)影響を示した初めての研究だ」と、マウント・サイナイ医学大学院のマシュー・ガルスキー教授は言う。「さらなる研究は必要だが、光にさらされることが免疫細胞の動きに影響すると結論付けられるかもしれない」

ガルスキーは、青色光は癌の免疫治療を補うものになるのではないか、と推測する。ただし、これはあくまで研究室での実験に基づくものであり、臨床現場での有効性を判断するには広範な検証が必要だ。少なくとも、治療目的の日焼けはまだやめておいたほうがいいだろう。

以上、スタブ・ジブ
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中