最新記事
株の基礎知識

自社株買いでストップ高!「日本株」の評価が変わり始めた理由とは?

2023年6月5日(月)16時50分
佐々木達也 ※かぶまどより転載
東京証券取引所

show999-iStock.

<なぜ今、自社株買いが増えているのか。変化を促したのは、2023年に入ってからの東証からの圧力。投資家へのメリットとは...>

自社株買いを実施する企業が増加しています。アイ・エヌ情報センターのレポートによると、2022年に実施された自社株買いの合計額は、前年比42%増の9兆2494億円となり、過去最高額を記録しました。

ところで、なぜいま、自社株買いが増えているのでしょうか? そして、投資家にはどんなメリットがあるのでしょうか? 実は、日本株の評価が大きく変わろうとしているのです。

そもそも「自社株買い」とは

自社株買いとは、「上場企業が自らの資金を使って株式市場から自社の株式を買い戻すこと」を指します。

買い戻した自己株式を消却して無効にすると、発行済み株式数は減ります。すると、1株あたりの配当や利益が増えることから、既存の株主にとっては配分が増えるメリットがあります。

2001年に商法が改正され、それまで禁止されていた金庫株(企業が保有する自社株式)が解禁となり、企業が制限なく自社株を保有したり、消却して無効化したり、再度新株として市場に放出したりすることが自由にできるようになりました。

さらに、取得した自社株は自己資本から外れるため、自己資本は理論上減額されます。すると、自己資本をどれだけ有効に活用して利益をあげているかを図る経営指標、ROE(自己資本利益率)は上昇することになります(支払い利息等は加味しない場合)。

また、企業が自社株買いをするということは、投資家に対して「自社の株価は割安である」とメッセージを送る効果もあります。

自社株買いの3つのパターン

企業が自社株買いを実施する方法はいくつかパターンがあります。

【1】市場内で買い付ける

もっともオーソドックスな方法は、企業が期間や金額の上限を決めて、自社株の取得枠を設定する方法です。取得枠の設定期間中は、企業が自社株を買い付けるとの思惑から株式の需給が引き締まる傾向にあります。

ここで留意すべきは、あくまで「取得枠の設定」なので、株価が高値で推移した場合などは取得枠を使い切らず、実際の買い付け金額が目標に対して未達となる場合もある、という点です。

取得枠の設定や自社株買いの終了といった情報は、東京証券取引所の適時開示情報に随時掲載されます。

【2】立会外取引によって買い付ける

自社株買いに、東京証券取引所の立会外取引の電子取引ネットワークシステム(ToSTNeT)が用いられる場合もあります。

この場合は、寄り付き前などの立会外(たちあいがい=証券取引所の取引時間外)で取引が行われるため、通常の立ち会いに影響を及ぼすことなく、まとまった金額を取引する機関投資家などに利用されます。大口株主が持ち株を売りたいとの意向で、企業と価格などを協議した上で実施することも多いです。

シェアハウスなどの不正により経営危機となったスルガ銀行<8358>は、2020年、家電量販大手のノジマ<7419>とビジネスモデルの転換などを目指すための資本業務提携をしました。ノジマがかつての創業家の持ち株を引き受けて、事業連携を模索していました。

しかし、それが難航したことにより、ノジマから持ち株を売却して資本業務提携を解消したいとの申し入れがありました。リリースによると、2022年3月9日に前日の終値407円で普通株4341万4000株(発行済株式総数の18.5%に相当)を、スルガ銀行が立会外取引で自社株買いを実施しています。

(参考記事)変わる日本企業の株主還元で、日本株がアメリカ株より優位になる可能性も

食と健康
「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社食サービス、利用拡大を支えるのは「シニア世代の活躍」
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ、鉱物協力基金に合計1.5億ドル拠出へ

ワールド

中韓外相が北京で会談、王毅氏「共同で保護主義に反対

ビジネス

カナダ中銀、利下げ再開 リスク増大なら追加緩和の用

ワールド

イスラエル軍、ガザ市住民の避難に新ルート開設 48
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中