リンカーン暗殺犯だって「舞台で歌う」?...政治的なミュージカルに響く「共鳴と不協和音」
A MIRROR OF AMERICA

アメリカ史を再解釈した作品としては、15年開幕の『ハミルトン(Hamilton)』⑨も重要だ。
初代財務長官ハミルトンの生涯を緻密なラップと人種マイノリティー俳優の積極的起用を通じて、貧しい移民の立身出世譚として鮮やかに提示し、社会現象となった。
独立戦争の場面で、西インド諸島出身のハミルトンとフランス出身の盟友ラファイエットが「俺たちは移民だ、仕事をするぞ」と発奮する箇所で、客席から歓声が上がるのが恒例である。
第1次トランプ政権誕生直前に開幕した本作は、移民排斥を隠さない政権への抵抗の象徴としてしばしば議論を起こした。第2次トランプ政権下でも、トランプが介入を強めたケネディ・センター公演をキャンセルするなど、移民の力と労働を鼓舞する作品として立場を示している。
一方で、合衆国黎明期の先住民虐殺や奴隷制の温存への言及は希薄である。何かを強く打ち出し、別の何かに沈黙する......。革命的と称される同作もまた、ポピュラー・エンターテインメントの力学から逃れられないのである。





