リンカーン暗殺犯だって「舞台で歌う」?...政治的なミュージカルに響く「共鳴と不協和音」
A MIRROR OF AMERICA
時代との共鳴と不協和音
ここまで見てきたように、ミュージカルは社会と響き合い、摩擦を起こし、時に沈黙してきた。これまで取り上げた論点は相互排他的ではなく、一つの作品の中で複数の論点が交差することも少なくない。『ウィキッド(Wicked)』⓾はその好例だ。
肌の色や種族に基づく差別に立ち向かうエルファバの姿には、これまで差別や不条理にあらがってきたミュージカル作品の志が受け継がれているようである。
また、道を分かったエルファバとグリンダの間になお強い感情が交わされることは、異性愛を主流としてきたミュージカルにおいて、別の愛の在り方を示す。
さらに、『オズの魔法使い』というアメリカ文学の遺産を想像/創造的に再解釈することで、『ウィキッド』は03年の初演当時の世相を見事なまでに捉えた作品となった。
そんな作品がこの混沌とする20年代に映画化された時、時代との共鳴や不協和音、沈黙がどのように響くのか。前編・後編ともに、現代社会との関連性を指摘する声が上がっていることは、示唆的だ。
ミュージカルに込められたメッセージと響きをどう聴き取るのか──私たち自身の現実社会に対する態度が試されている。
【前編はこちら】実は「ミュージカルはポリティカル」?...社会の闇を描き出す「知っておくべき」社会派作品10選
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