32歳で「自己破壊」の寸前に...ブルース・スプリングスティーンを追い込んだ「男の呪い」とは?
Bruce Springsteen, Manhood and Mental Health | Opinion
本作はいわゆる伝記映画ではない。むしろ「『探求』の探求」だ。ロックとポップの名声と富に彩られた「約束の地」で、32歳のスプリングスティーン――未成熟なまま大人になった「男の子」が、いかにして幼少期の深いトラウマによって自己破壊寸前まで追い込まれたのかが描かれる。
この作品はもはや映画の枠を超えている。壊れやすい男性性をここまで繊細かつ誠実に描いた作品は、これまでほとんどなかった。
さて、話を2025年のスプリングスティーンに移そう。76歳になった彼は今年初めのツアー中、ドナルド・トランプを公然と批判し、賛否両論を巻き起こした。
これは、彼が過去にLGBTQ+コミュニティへの支持を何度も表明したときや、警察の暴力と人種プロファイリングをテーマにした7分間の痛烈な叙事詩「アメリカン・スキン(41発の銃弾)」を発表したときと同じような反応だった。
いまや彼は、世界的なアイコンであり、夫であり、父であり、そして祖父でもある。だが、いったいどうやってここまで来たのか。
アルコール依存症の父に虐待され、家族全体が恐怖に支配されていたニュージャージーの少年が、30代で自殺を考え、最終的にはセラピストのもとを訪れ――そして、自伝や映画に描かれているように、生涯で初めてと言えるほど泣いたあの瞬間へと至るまでに。





