最新記事
BOOKS

大河ドラマ『べらぼう』が10倍面白くなる基礎知識! 江戸の出版の仕組みと書物の人気ジャンル

2025年1月8日(水)11時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

また、こうした出版物は書物屋仲間内で一定の検閲を受けた上で、制作するのが通例であった。江戸の出版物の取り締まりについては、大岡越前守の立案に端を発し、1721(享保6)年に江戸の書物屋仲間が組織され、翌年には出版のルールを明記した出版条目を発令している。

この過程で、書物屋仲間内で仲間行事を立てて、重板・類版がないかどうか互いの利益を守るために検閲を行うようになった。これを写本改めと呼ぶ。その後、印刷・製本し再び検閲が行われ、こうした行事改(あらため)を通過したものが流通・販売される。

赤本から黄表紙まで、江戸の本模様

江戸時代には洒落本や人情本、滑稽本や読本など、さまざまな種類の本が生み出された。

特に蔦屋重三郎が活躍した安永・天明期に全盛を迎えた黄表紙は、草双紙と呼ばれるジャンルのうちのひとつである。また、草双紙は江戸の地本問屋が積極的に出版し、独自の発展を遂げた人気ジャンルであった。江戸の地本問屋の成長は、草双紙の発展とともにあったといっても過言ではない。もともと草双紙は、「花咲爺さん」や「桃太郎」「文福茶釜」などの童話を絵本化したものや浄瑠璃を素材にしたものが中心で、読者も子供を想定したものであった。丹に色いろの表紙であったため、赤本と呼ばれた。

newsweekjp20241216064153-cbc57b1ad55f04e9172214c14747bcf80eb37795.png

その後、演劇物や戦記、敵討物を中心的な題材とした草双紙が作られ、表紙が黒色であったことから黒本という。その後、流行した萌黄色の表紙の青本は、より当時の社会風俗を取り込んだ大人向きの絵入り読物となった。その後、鱗形屋孫兵衛の書店から恋川春町『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』が刊行されて以降、黄色の表紙の大人向け草双紙である黄表紙が大流行することとなる。

黄表紙は日光による褪色も早いことから、初めから安価な黄色い表紙を付けるなどの工夫が施されている。値段も1冊10文(約200円前後)と安価で、量販向きの書物であった。

newsweekjp20241216064116-2578d1988d2c3cdcc5941361c80252c62a6ffa73.png

newsweekjp20241216064214-306f909c4f02f9b6e8cf746cfebc3f6e8234752b.png

newsweekjp20241001115047-ee86b8473e023f94c5bb356eb9d63c033a7c24e8.jpg
Pen BOOKS 蔦屋重三郎とその時代。
 ペン編集部[編]
 CCCメディアハウス[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


newsweekjp20241001110840-52d8ba4d464f051b147f072154166ed910f7d37d.jpg

newsweekjp20241001110900-d17961cf9be794dc02a88e04cb4a7558dd610fb8.jpg

ニューズウィーク日本版 脳寿命を延ばす20の習慣
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月28日号(10月21日発売)は「脳寿命を延ばす20の習慣」特集。高齢者医療専門家・和田秀樹医師が説く、脳の健康を保ち認知症を予防する日々の行動と心がけ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

カタール、ガス生産国に貿易障壁反対を呼びかけ

ビジネス

中国系電池メーカー、米工場の建設断念 ミシガン州が

ワールド

「経済あっての財政」が基本、戦略的に財政出動 高市

ワールド

英財務相、所得税引き上げ検討 財政赤字削減で=ガー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 3
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中