最新記事
スポーツ

「女子スポーツ」とは何か?...トランスジェンダー選手との競争は本当に「フェア」なのか

Biological Reality in Sports

2023年8月14日(月)13時20分
チェルシー・ミッチェル(大学4年生)
チェルシー・ミッチェル

生物学的男性の女子種目出場は女子選手への差別だと訴えたミッチェル ALLIANCE DEFENDING FREEDOM

<テストステロン量で男性が女性よりもスポーツで有利なことは科学的な常識。生物学的性差を無視し、「個人的アイデンティティー」を重視する「アンフェア」な現実について>

そのとき、私は自信満々でいていいはずだった。

2019年、米コネティカット州中・高等学校競技連盟(CIAC)が主催する「S級選手権」の陸上女子100メートル予選に出場した私は、12秒14をマークして決勝シード権を獲得した。

決勝で走るのは誰もが望む中央のシードレーン。走力には自信があった。私は州最速の女子選手の1人だ、と。

 
 
 
 

でも、スタートラインについた私は震えていた。両隣には、生まれたときの性別が男性の選手が2人。他のレースの10倍も緊張していた。

「チェルシー、チェルシー!」

スタンドにいるアスリート仲間の声援がこだました。私が不利な競争を強いられていることを、仲間は知っていた。

スタートの号砲が鳴った。私の記録は12秒02。2着だった。トランスジェンダー選手の1人が11秒93のタイムで走り、私は負けた。

私は女子で最速だった。だがその日、表彰台の一番上に立ったのは、より力があって足が速い生物学的男性だった。

負けるのはつらいが、不公平なレースで敗者になるのは心を踏みにじられる思いだ。こんなことが起きているのは、性自認が女性の生物学的男性が女子種目に出場することを、CIACが認めたためだ。

高校時代の4年間に計27回、私はトランスジェンダー選手と並んで、誰もがフェアでないと承知しているレースを走った。あの2人と競い合って、勝ったことは一度もない。

2人は女子種目を制覇していた。両者合わせて州大会の15種目で優勝し(2016年には、女子選手計9人が1位になった種目だ)、17の大会新記録を出し、女子選手の出場機会を85回以上奪った。

陸上女子短距離選手が勝者になりたいなら、別の種目に転向すべきなのは明らかだった。

私自身は走り幅跳びに切り替えた。短距離走ならではの興奮が大好きなのに、悲しいことに私は短距離種目を恐れるようになっていた。

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界

ワールド

アングル:米援助削減で揺らぐ命綱、ケニアの子どもの

ワールド

訂正-中国、簡素化した新たなレアアース輸出許可を付
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中