最新記事
映画

笑い満載、風刺ピリリの『バービー』映画...ガーウィグ監督の新作、見どころは?

A Pink Summer Confection

2023年8月10日(木)16時00分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
映画『バービー』

持ち主を救うため旅に出たバービーにケンがちゃっかり同行 ©2023 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

<この夏全米を騒然とさせたガーウィグ監督の新作映画、人間世界とバービーランドの大騒動をお見逃しなく>

「あなたがバービーに夢中なら、これはあなたのための映画。あなたがバービー嫌いでも、これはあなたのための映画」──グレタ・ガーウィグ監督の『バービー』はそう約束(もしくは警告)する。

【動画】映画『バービー』予告編

これは誠実さと誇張のギリギリの境界をゆく宣伝文句だ。

若き女性監督が今年64歳の誕生日を迎えた着せ替え人形を主人公に実写映画を撮った。観客はその試みに喝采を送るべきなのか。それとも解剖学的にあり得ないウエスト・ヒップ比率こそ魅力的な女性の条件だと少女たちに思い込ませてきた男性目線の商品とのタイアップを批判すべきか。

フェミニズムに傾倒する母親の方針でバービーを買ってもらえなかったけれど、友達の家でバービーで遊び、ハイヒール向きのアーチ型の足の裏や乳首のない胸、割れ目のない股間に目を丸くした記憶がある人たちはどうなのか。

「大丈夫!」と宣伝文句は請け合う。ファッションに夢中な10代の女の子も「社会通念をぶっ壊せ派」もバービー人形に何の思い入れもない人も漏れなく楽しめますよ、と。

でも全ての人を満足させる映画なんて作れるの? ガーウィグの答えはずばり、多彩な要素を何層にも盛り込む、というもの。歌ありダンスありのコメディーに辛辣な風刺を盛り込み、さらにそこに堂々たるフェミニスト宣言を入れ、目の覚めるようなド派手なトーンで全体をまとめる。

そうやって仕上がったこの映画はスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』さながら、黒いモノリスの代わりに水着姿の巨大バービーが立つやけに荘厳なシーンで始まる。何事かと目を凝らした観客が続いて投げ込まれるのはピンクのユートピア、「バービーランド」だ。バービー人形が実物大の人間として暮らすこの世界では、女性が支配権を握っている。

妊娠したバービー人形のミッジを除いて、この世界に住む女性たちは全員バービーと呼ばれる。マーゴット・ロビー演じる主人公は「ステレオタイプのバービー」。金髪で青い目の完璧なプロポーションの持ち主だ。バービー仲間やケンたちを招いて自宅でパーティーを開いている最中、彼女はふと不安を漏らす。「死ぬってどういうこと?」

突然、音楽はやみ、さっきまでノリノリで踊っていた仲間たちは恐ろしげに彼女を見つめる。翌日、彼女がなぜか扁平になった足の裏を見せると、またもや同じ反応が......。

食と健康
「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社食サービス、利用拡大を支えるのは「シニア世代の活躍」
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米上院、ミラン氏をFRB理事に承認 CEA委員長職

ワールド

豪経済見通し、現時点でバランス取れている=中銀総裁

ワールド

原油先物横ばい、前日の上昇維持 ロシア製油所攻撃受

ワールド

クックFRB理事の解任認めず、米控訴裁が地裁判断支
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中