最新記事
坂本龍一

坂本龍一が遺した名言を聞け──韓国音楽のブレイク、金融危機後の資本主義の揺らぎも予見

IN HIS OWN WORDS

2023年5月2日(火)11時30分
江坂 健

──世界には、音楽と共に豊かな生活を送っている人々も多いと思いますが。

まず、いつも羨ましく思うのは、韓国に行った時に、韓国人は本当に音楽的というか、日本人よりもはるかに歌うこととか、音楽で表現することが好きだし上手ですよね。いろいろな感情表現がぜんぶ音楽表現に出てきますね。

ストレートに表現するから、世界的に見ると彼らのほうが表現は豊かですよ。だから何も知らないアメリカ人が見たら、あっちのほうに引かれるんじゃないかな。

──沖縄などはどうですか?

沖縄の民謡酒場は、ずいぶんはやっていたな。驚愕するよね。おじいちゃん、おばあちゃんまで何世代も、夜中まで踊っているから、びっくりしちゃうよ。その感じはブラジルなんかもそう。ブラジルは、町単位でカーニバルの時にせりを出すじゃないですか。だから、町単位で練習するでっかい体育館みたいな広場があって、歩いているとすごい音がするから、音に引き込まれて入って行ったらものすごいんですよ。練習している音の圧力、エネルギーが。技術というよりも、音の粒が何万個も重なって、ぐわーっと押し寄せてくるそのエネルギーはすごいですね。

──そういうのは「伝統」によるものなんでしょうか。

コミュニティーに根差しているんでしょうね。日常的なことなのかな。彼らにとっては、回覧板回すのと同じようなことなのかもしれませんね。

あとやっぱり、「音楽が救い」というのはあんまり言いたくないけれど、そういう役割というのは絶対にありますね、音楽は。僕のオペラ『LIFE』の中で、(ドイツの振付師・舞踏家の)ピナ・バウシュが、ロマの人たちのことを語っていて「辛い時に、泣くんじゃなくて歌え、って、お母さんに言われた」というのがあって。「Sing!」と。今のガザでも歌っているかもしれない。

──個人的な経験でも、「音楽」というレベル以前に、音を出すのが身体に響いて心地いい、と感じることがあります。

悦(よろこ)ぶ、というのは何か快感物質が出ているんだと思うんだけれど。それは、別に概念的に悦んでいるわけじゃなくて、たぶんもっと生物として、細胞レベルでうれしいということなのかもしれないね。だからさっきの僕の話も、気持ちいい響きを聴いたり、自分で作ったりした時は快感物質のようなもの、脳内麻薬のようなものが出ているんでしょう。

僕の持論でもありますが、よいコンサートほど眠たくなりますよ、必ず。だから、寝られないようなコンサートはダメです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中