最新記事

坂本龍一

坂本龍一が遺した名言を聞け──韓国音楽のブレイク、金融危機後の資本主義の揺らぎも予見

IN HIS OWN WORDS

2023年5月2日(火)11時30分
江坂 健
坂本龍一

インスタレーション『LIFE』も坂本の当時の方向性を示している(2010年) ALESSANDRA BENEDETTIーCORBIS/GETTY IMAGES

<2009年の音楽誌インタビューで語っていた、「救い」としての音楽と韓国音楽の可能性、資本主義の揺らぎ>

2009年に5年ぶりとなるソロアルバム『out of noise』を発表するタイミングで、坂本龍一はウェブ音楽誌e-daysの取材に応じた。自らの音楽の成り立ち、社会の中の音楽の役割について答えつつ、韓国音楽のブレイクや金融危機後の資本主義の揺らぎも予見していた。(聞き手は江坂健)。

◇ ◇ ◇


──これまでの坂本さんの音楽からは、構築的な印象を持つことが多かったのですが、今回は絵画的というか、感覚的というか......そんな印象を持ちました。今、音楽を作られるに当たって、最も大切にされていることは何ですか?

「響き」ですね。今回は、特にコンセプトもなく......いつもないんですけれど(笑)。2、3年前から自分で取ったメモを振り返ってみると、響きから何かを作ろうとしていた、しているんですね。響きは街にもいろいろあるじゃないですか。いろいろな好きな響きを追っているという感じですね。だから、構築的に何かを作るという、建築的なことはあまりやってなくて。

──それは、ここ数年、徐々にそうなられたんですか?

だんだん響き重視になってきたという感じですかね。う~ん、そうなんだろうな。建築と音楽ってよく比較されるけれど、建築的に音を重ねていって何かを作る、ということにはあまり興味がなくなってきたかな。今回は生け花だったら刈る、音を抜くようなことを重視してきた。自然にそうなってきたんですけれど。

──音のバランスというか、美を重視されている、ということですか?

まぁ、美なのかな......。それはもう、個人的なものだから、なんと言ったらいいのか。バイクのエンジンのブルルン~、という音が好き、という方もいるでしょうし。美と言わなくてもいいのかもしれない、好きな「音」ということですね。響きで。もっと簡単に言っちゃうと、自分の聴きたいような音を並べただけなんですよ。作った、ではなく。

──(アーティストの)高谷史郎さんとのインスタレーション『LIFE』の情景も、今回、思い浮かぶイメージに近いものがあります。

あれもやっぱり大きく影響しているかな。あれも構築的ではないですね。もっと空間的というのか、あの時は「庭」と言っていたんですが、2次元的な時間の流れで何かが生起していくとか、論理的に何かに移っていくというようなことはほとんど考えないで、空間にどう音を置くか、ということが面白かったんですね。

【動画】坂本龍一ソロアルバム『out of noise』

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

マスク氏とインドネシア保健相、保健分野でスターリン

ビジネス

アングル:米株が最高値更新、経験則に従えば一段高の

ワールド

イラン大統領と外相搭乗のヘリが山中で不時着、安否不

ワールド

カナダ、中国製EVの関税引き上げ検討=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中