最新記事
映画

「犯罪ノンフィクション」の醜悪な世界──思い込みが自らに返ってくる恐ろしすぎる映画

The Dangerous True-Crime Brain

2023年4月16日(日)10時15分
キャット・カルデナス

前作のプレミア上映から5年の間に多くの変化が起きた。デバイスの画面上だけで物語が展開する手法に斬新さはないが、社会の変化を受けて、本作の犯罪ノンフィクションカルチャーへの批判は鋭さを増し、熱中がもたらす危険や醜い現実を描き出している。

当局の対応に不満を募らすジューンは、ケビンのフェイスブックで情報を集め、彼の電子メールアカウントにログインする。やがて有望な手掛かりが浮上し、ケビンに犯罪歴があることも分かる。

ジューンのオンライン捜査には二重の効果がある。新たな手掛かりが見つかるたび、緊迫度が高まる設定は見事だ。一方、その素人探偵ぶりは、関係者の私生活をつつき回し、誰でも彼でも容疑者に仕立ててしまう現実世界のありさまを突き付ける。

事件が注目を浴びるなか、ジューンは母親が容疑者にされていく事態を恐怖に満ちた思いで見つめる。グレースに親しい友人や家族がいないことが怪しまれ、彼女が改名していたことが判明し、ニュース番組やオンラインで自作自演説が広まっていく。

これこそが、もう1つの側面だ。母親の行方を追う過程で、ジューンはケビンの真実を暴くことに成功する。だが同時に、自分の母親に向けられているのと同じ視野の狭いレンズ、ゆがんでいるかもしれないレンズを通して他者を見ることになってしまう。

悲劇を娯楽に変える罪

犯罪被害者や犯人と目される人はドラマの登場人物さながら、ソーシャルメディアで人生をさらされ、つつき回される。犯罪ノンフィクションにのめり込む人々はデジタル世界に散らばる遺物を解読し、知りもしない相手の人物像を再構築しようとする。

この問題は本作の終盤でさらに複雑になる(この先、ネタバレ注意)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EUのロシア産原油輸入停止法制化案、ハンガリー議会

ワールド

トランプ氏、一般教書演説で「強く繁栄する米国」強調

ワールド

米政府、インドなどアジア3カ国の太陽光製品に暫定的

ワールド

国連総会、ウクライナ支持決議を採択 米は「交渉の妨
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中