最新記事

セレブ

「1日で20億ドル失った」ブランドにも弁護士にも見限られたカニエ・ウェスト、業界追放か

2022年10月29日(土)10時50分
千歳香奈子
カニエ・ウェスト

相次ぐ暴言、問題発言で「四面楚歌」に(写真は2月13日、SoFiスタジアムでスーパーボウルを観戦するウェスト)  Mark J. Rebilas-USA TODAY Sports/File Photo via REUTERS

<かねてより言動が問題視されてきたカニエ・ウェストだが、反ユダヤ発言で批判が高まり、関係企業が相次いで契約解消を発表。ギャップ、バレンシアガ、そしてアディダスも>

SNSでの反ユダヤ主義的な発言で物議を醸しているイェ(Ye、改名後の現在の本名)ことラッパーのカニエ・ウェスト(45)が、止まらぬヘイトスピーチで業界追放の危機に直面している。

ファッションデザイナーとしても活躍し、大手ブランドとの契約でビリオネアに上り詰めたウェストは、自身の言動によってわずか1日で20億ドルを失ったとインスタグラムに投稿した。

ドイツのスポーツ用品大手アディダスや米大手衣料品チェーンストアブランドのギャップ、仏パリに本店を構える高級ブランドのバレンシアガなど大手企業との契約により、米経済誌フォーブスによる今年の推定保有資産は20億ドルとされていたウェストに、一体何が起きているのだろう。

「ユダヤ人にデスコン3を」「フロイドの死因は薬物の過剰摂取」

事の発端は、今月初旬に「going death con 3 on JEWISH PEOPLE(ユダヤ人にデスコン3を行う)」とツイートしたこと。「デスコン」は米軍の国家安全保障に関する脅威を示す用語「デフコン」を指しているものと見られ、このツイートは「ユダヤ人に対する防衛レベルを3に引き上げる」と書き込んだものだと多くが解釈した。

この投稿を受けてツイッターは、以前からSNSでヘイトスピーチをくり返してきたウェストに対し、「ポリシー違反」を理由に投稿を削除し、アカウントを一時凍結した。

問題はこれだけではない。

今月初めには自身のファッションブランド「Yeezy(イージー)」のファッションショーで白人至上主義に関するスローガン「ホワイト・ライブズ・マター(白人の命は大切)」の文字がプリントされたTシャツを着用して炎上もしている。

また、2020年に起きた黒人に対する人種差別撲滅を訴える「ブラック・ライブズ・マター」運動のきっかけとなった白人警察官に膝で首を押さえ付けられて黒人男性ジョージ・フロイドさんが亡くなった事件を巡っても、「死因は警察官による暴力ではなく、薬物の過剰摂取によるもの(※事件に関わった警察官は殺人罪で有罪判決を受けている)」だと陰謀論をぶちまけ、遺族から2億5000万ドルの損害賠償を求める訴訟も起こされている。

【写真を見る】「ホワイト・ライブズ・マター」と書かれたTシャツを着るウェスト

ウェストの言動が問題視されるのは、これが初めてではない。16年に双極性障害と診断されているウェストを巡っては、これまでも数々の暴言や問題発言がメディアを賑わせてきた。過去には「奴隷は選択だった」と述べて炎上したこともあるが、こうした発言や言動は極端な気分の浮き沈みを特徴とする病気によるものか否か判断は難しく、問題を複雑にしてきた。

しかし、今月に入ってから連日続く問題発言に端を発し、ウェストと関係を持つ大手企業に対し「契約解消」を求める声が殺到。相次ぐ反ユダヤ主義的な発言が大きな波紋を呼んだこともあり、批判にさらされた企業は堪忍袋の緒が切れたと言わんばかりに一斉にウェストとの関係を断つ方向に舵取りを始めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国大手銀行、高利回り預金商品を削減 利益率への圧

ワールド

米、非欧州19カ国出身者の全移民申請を一時停止

ワールド

中国の検閲当局、不動産市場の「悲観論」投稿取り締ま

ワールド

豪のSNS年齢制限、ユーチューブも「順守」表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 5
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中