最新記事

テクノロジー

「4000冊の蔵書が一瞬で吹っ飛んだ」 電子書籍の落とし穴 ── あなたは購入していない

2021年9月26日(日)19時38分
三上 洋(ITジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

たとえば友人からAmazonギフト券をもらった場合、それがもし転売されたギフト券であれば受け取った側が停止される可能性があることになります。友人がどこから入手したかを聞くことはできないでしょうからとても怖い事態です。

そのため、自分のKindleを守るためには、ギフト券の扱いに慎重になるべきです。出所不明のギフト券、たとえばAmazonでの購入トラブル時にショップからお詫わびとして送られてくるギフト券は使わない、などの配慮が必要です。

電子書籍の所有権を売買する新たな取り組みも

このように電子書籍ストアの利用ではリスクが常につきまといます。

解決する手法としては、最近話題のNFT(Non-Fungible Token)を使った電子書籍販売があります。NFTとは非代替性トークンと呼ばれるもので、デジタルアートや写真・動画などの鑑定書・所有証明書になるデータを指します。暗号資産(仮想通貨)と同じブロックチェーン技術を使うことで、「唯一無二のもの」として証明でき、かつ誰がいつどこから入手したのかも証明できます。

このNFTを電子書籍に導入することで、電子書籍の「所有権」を売買しようという動きが始まっています。日本では株式会社Gaudiyとコミックスマート社が「NFT×電子書籍」という取り組みを始めています。

今までの電子書籍は利用権のみでしたが、NFTによって「所有権」が発生します。ユーザーは電子書籍の所有権を持つことができ、売買も可能になるのです。紙の本と同じ様に所有権があるのですから、アカウント停止やサービス停止があっても利用できる可能性が高くなります。また二次販売でも元の著作権者に収益を還元するしくみを実現できるため、ユーザーにとっても著作権者にとってもプラスでしょう。

newsweek202109261924.jpg

株式会社Gaudiyとコミックスマート社によるNFTを使った電子書籍の流通システム

とても素晴らしいしくみですが、問題は対応する電子書籍ストアがあるかどうかです。電子書籍最大手のKindleが対応してくれればいいのですが、まだわかりません。

理想はこの電子書籍のNFT化ですが、それが実現・普及するまでは従来の方法を取るしかないでしょう。長期保存したい書籍は紙の本にし、それ以外は電子書籍で読むといった使い分けに加え、利用する電子書籍ストアの規約をよく読み、アカウント停止にならないようにギフト券などの扱いに慎重になること。消極的な対策ではありますが、今のところこの方法で進めるしかないようです。

三上 洋(みかみ・よう)

ITジャーナリスト
ITセキュリティやスマートフォン業界に精通するITジャーナリスト。守備範囲はウイルスからネット炎上まで多岐にわたる。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・チリ、レアアースなど重要鉱物巡る協議開始で合意

ワールド

原油先物下落、米がロシア産石油購入を30日間許可

ビジネス

金融市場に大きな変動、 極めて高い緊張感持って注視

ワールド

米、各国のロシア産石油購入を30日間容認 エネ市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 4
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 7
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 10
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中