最新記事

アカデミー賞

今年のアカデミー賞候補はハズレなし! 一方で過去の「駄作」候補は...

Good Movies in a Bad Year

2021年4月9日(金)17時41分
ダン・コイス(スレート誌エディター)
映画『シカゴ7裁判』のワンシーン

作品賞にノミネートされた『シカゴ7 裁判』 NIKO TAVERNISE/NETFLIX ©2020 

<ノミネートされた9本全てが傑作ぞろいなのはコロナの奇跡か。独断と偏見で斬る今年のアカデミー賞作品賞候補評>

かつてアカデミー賞の作品賞候補は5本だった。その数が2倍の10本に増えたのは、2010年のこと(12年以降は9本)。前年に、『バットマン』シリーズの最高傑作とも言われる『ダークナイト』がノミネートから漏れたことへの反省とされる。

おかげでここ10年ほどは、『17歳の肖像』『ウィンターズ・ボーン』『ネブラスカふたつの心をつなぐ旅』『ファントム・スレッド』『女王陛下のお気に入り』など、小粒だが優れた作品がノミネートされるようになってきた。たとえ受賞の可能性はゼロに近くても、こうした作品が候補に加わることでアカデミー賞全体の質が高まった。

だが、それには代償もあった。作品賞候補に駄作が入ることも増えたのだ。実際、候補作が増える前の20年間は、作品賞候補になった(筆者の考えるところの)ハズレ作品は計4本だったのに、この10年は計12本以上もある。

毎年1本は駄作候補が

せっかくだからタイトルを挙げておくと、2010年以前の20年間の駄作は、『ドライビングMissデイジー』『フォレスト・ガンプ/一期一会』『ブレイブハート』『クラッシュ』の4本。ただし4本とも作品賞を受賞していることは注目に値する。

一方、この10年間にノミネートされた駄作は、『しあわせの隠れ場所』『英国王のスピーチ』『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』『ミッドナイト・イン・パリ』『レ・ミゼラブル』『アメリカン・スナイパー』『レヴェナント:蘇えりし者』『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』『グリーンブック』『ボヘミアン・ラプソディ』『バイス』『ジョーカー』など、少なくとも12本。毎年1本は、ロクでもない作品が映画界最高の賞候補に交ざり込んでいる計算になる。

それだけに今年は特筆に値する。20年はコロナ禍に見舞われ、新作の公開や製作が遅れ、興行収入が激減するなど、ハリウッドにとっては散々な一年だったが、今年のアカデミー賞作品賞候補には、駄作が一本もないのだ! これは衝撃的な快挙と言えるだろう。

まず、問答無用に素晴らしいのは、『ミナリ』『ノマドランド』『サウンド・オブ・メタル〜聞こえるということ〜』の3本。万人向けではないが、間違いなく傑作と言えるのは『ファーザー』と『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア』だろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米下院補選、共和党候補の勝利確実に テネシー州

ビジネス

欧州10銀行、ユーロ連動ステーブルコインの新会社設

ビジネス

豪GDP、第3四半期は前年比2年ぶり大幅伸び 前期

ビジネス

アンソロピック、来年にもIPOを計画 法律事務所起
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中