最新記事

カルチャー

K-POPと共にハングルが世界へ拡散 ネットやデモで政治スローガン訴えるツールに

2020年12月8日(火)19時55分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

かつてはコンサート会場など限られた場所でしか見かけなかったハングルだったが……。写真は2014年ロサンゼルスで行われたK-POPコンサート会場で。REUTERS/Jonathan Alcorn

<エンターテインメントの世界で欧米でも人気を集める韓流。それが今度は政治的なメッセージにも影響を与えている>

BTSがビルボードの1位獲得に続きグラミー賞にノミネートされ、映画でも『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞受賞した2020年。これまで以上に韓国カルチャーが世界から注目を集めるようになった。

そうすると、今度は「K-POPアイドルが母国語で何を言っているのか知りたい!」「日本語訳の付いていない映画やドラマも見てみたい!」といった思いを抱いて韓国語の勉強を始める人も増え始める。

そういった韓国語学習者が世界規模で増加し、今、韓国語は世界中の人々がグローバルにメッセージを伝える一つのツールになりはじめている。

ナガルノカラバフ紛争めぐりハングルで反戦メッセージ

今年10月、アルメニアの若者たちがハングルで書かれた看板でオンラインデモを行い話題となった。アルメニアは、隣国であるアゼルバイジャンと領土・宗教など様々な理由で争ってきた。90年代初頭から数年にわたり大規模な衝突を繰り返し、最近でも2016年、2019年、そして今年9月にも軍事衝突が勃発し数百人規模で民間人が亡くなっている。

そんな状況のなか、アルメニア人の若者は反戦と平和を訴え、なんと母国語ではなくハングルでメッセージを書き、オンラインを通じて世界中のK-POPファンやKカルチャーファンの人々に訴えたのだ。

さらに、ツイッターでもハングルでの書き込みを始め、アルメニアの悲惨な状況を、写真と共に投稿して注目を集めていた。現在、和平には長期的課題が残るものの、両国は一応停戦に合意している。停戦にアルメニアの若者たちの韓国語でのメッセージがどれだけ役立ったのかは不明だが、世界中の人びとにこの問題を認識させる助けになったことは確かだろう。

彼らが韓国語に注目したのは、今世界で注目を集めている文化であることはもちろん、K-POPアイドルが、国際的な社会問題に目を向け影響力をもっていることも大きい。

特に冒頭でもふれた世界的活躍をみせるBTSは、国連でスピーチを行ったり、国際イベントに参加したり、その活動の幅はただのアイドルの枠には収まらない勢いだ。

BTSのファンたちもそのスピリッツを受け、自発的に慈善活動グループを作り活動しているのも興味深い。最近では、BLM活動に募金を呼びかけ、なんと1億円近くの寄付を成功させて国内外で話題となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定「完全な経済協力」、対ロ交渉

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中