最新記事

映画

韓国、コロナ禍の釜山国際映画祭 オンラインで国境越え観客も交流、新たな道示す

2020年11月6日(金)11時40分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

日本映画の活躍も

釜山映画祭といえば、毎年たくさんの日本映画を上映し、さらに人気俳優や監督たちが大勢訪れるとして有名だ。今年は当然日本からは訪問できなかったが、それでも日本勢の活躍が目立った。

まず、春本雄二郎監督の『由宇子の天秤』が、ニューカレンツアワードを受賞した。これは、新人監督コンペティション部門の最高賞で、長編映画2作目までの監督に送られる賞だ。

さらに、釜山国際映画祭と同時開催となった「アジア・フィルム・アワード」では、新人監督賞には、『37セカンズ』を撮ったHIKARI監督が選ばれた。この賞は、2007年より香港国際映画祭、釜山国際映画祭(その後2013年より東京国際映画祭)が、アジア映画を対象に選ぶ映画賞のことである。

黒沢清監督に「歴史問題」の質問も

また、韓国でも人気の黒沢清監督の新作『スパイの妻』の上映と、オンラインでの記者懇談会が行われ盛況だったと韓国メディアは大きく報じた。今年9月に開催された「第77回ヴェネツィア国際映画祭」にて、最優秀監督賞にあたる銀獅子賞を受賞した話題作であることはもちろんだが、第2次大戦中の旧日本軍731部隊を扱った映画であることから、韓国の記者からは、戦争犯罪に関して「日本がした過去を指摘するというメッセージなのでしょうか?」といった質問も飛び出した。

これに対し黒澤清監督は、「政治的なメッセージを入れた映画ではない。時代と結合したエンターテイメント映画を作ろうとした」としながら、「良心的に受け入れたら嬉しい。当時をまじめに描こうとした」と答えている。

韓国の記者とのオンライン懇談会は活気に満ちたものとなり、当初1時間の予定が30分も延長して1時間半行われたそうだ。

毎年、開閉幕作品はその映画祭を象徴する作品が選ばれるため、どんな作品が取り上げられるか注目が集まるものだ。今年の閉幕作には日本のアニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』が上映された。

『ジョゼと虎と魚たち』と言えば、2003年公開の犬童一心監督による実写版は、韓国でも上映され多くの韓国民に愛される映画となっている。その後、主演を務めた2人も韓国で注目が集まり、妻夫木聡は日韓合作映画『ノーボーイズ ノークライ』に、池脇千鶴は韓国映画『おいしいマン』にそれぞれ主演で起用されている。

今年の釜山映画祭は、規模の縮小はあったものの、ITに強い部分やアイディアをやってみる精神など、韓国らしさを生かしながら開催された。日本では10月末より11月9日まで「東京国際映画祭」が開催されているが、映画祭・フィルムマーケット共に、こちらはどのような成果を見せてくれるか楽しみである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請件数は横ばいの21.3万件、労働

ワールド

トランプ大統領、イラン次期指導者の選出に「関与する

ビジネス

EXCLUSIVE-NATO、集団的自衛権行使の協

ビジネス

米インフレと雇用改善、FRBのリスク見通しを変更も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    「え、履いてない?」モルディブ行きの飛行機で撮影された、パイロットの「まさかの姿」にSNS爆笑
  • 3
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場所にSNS震撼「自国の場所すらわからない」
  • 4
    対イラン攻撃に巻き込まれ、湾岸諸国が存立危機
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリン…
  • 7
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 8
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「旅客数が多い空港」ランキン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中